著者
若松 大祐
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

現代台湾(1945-現在)において、中華救助総会(救総)はとりわけ泰緬地区の同胞を救援するに際し、いかにして「我々」(国民国家的な主体)の歴史を叙述してきたのか。本研究の目的はこの問いを解明し、現代台湾という時空をよりよく理解することに在る。三年目の今年度は、現代台湾史において出現した官製歴史叙述や泰緬孤軍像を背景として踏まえた上で、特に救総が展開する歴史叙述について考察を試み、次の2つの知見を得た。すなわち、第1に、現代台湾において泰緬孤軍というふうに名づけられた泰緬地区在住の人々を、中華民国政府の主導する人権概念に基づき、救助対象とみなしていたこと。第2に、世代交代により、孤軍後商(孤軍の末窩)と呼ばれる人びとが出現し、救総の他にも中華民国と孤軍を架橋する媒体が出現したこと、の2点である。孤軍後裔は、救総とのつながりを相対的に希薄化しつつも、台湾との多様なつながりを持ち、タイや台湾という土地に根付こうとしており、タイにおいては朝野挙げての観光立国化の機運の中で、ゴールデン・トライアングルに関するテーマパークを立ち上げたり、台湾においては朝野挙げての多元化の機運の中で、雲南文化公園を設置している。特に第2点について、更なる考察を踏まえ、投稿を前提にした論文を執筆中である。受入機関の京都大学で東南アジア地域研究に関する研究会や講義へ参加し、またタイへ1回、台湾へ1回短期出張して、今年度の研究を遂行ができた。

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