著者
高橋 政代 高橋 淳
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究(C)
巻号頁・発行日
2000

ヒト胎児脳および網膜からの神経幹細胞の分離培養11週齢のヒト胎児から大脳と眼球を摘出し、眼球からは網膜のみを剥離する。大脳および網膜を機械的および酵素にて細胞に分散したのち、DMEM/F12に塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)と上皮細胞増殖因子(EGF)を添加した無血清培地にて培養したところ、徐々に増殖、増大する細胞塊が得られた。この細胞塊を形成する細胞の多くはネスチン陽性の未分化な神経系細胞であり、神経幹細胞を含むと考えられているneural sphereと同様の細胞集団と思われた。さらに、この細胞塊をラミニンコートした培養皿でbFGFとEGFを除去して培養すると細胞は培養皿上に接着し、形態を変化させた。神経突起様の突起を伸ばした細胞の一部は免疫細胞化学的検討にてβチュブリンIII陽性の幼若な神経細胞に分化しており、また、一部はGFAP陽性のグリア細胞に分化していた。これらの結果からヒト胎児脳および網膜から神経幹細胞あるいは神経前駆細胞が得られたと考えられる。ヒト成体虹彩神経色素上皮細胞の培養我々は、成体ラット虹彩色素上皮細胞を上記と同様の培養条件で培養することにより、神経とグリアに分化する能力を有するネスチン陽性の神経前駆細胞が得られることを確認している。同様にして、緑内障手術の際に得られるヒト成体の虹彩色素上皮を培養することにより、増殖する細胞を得ている。現在この細胞の多分化能を検討中である。以上の実験はいずれも京都大学医の倫理委員会の承認を受けて実施したものである。

言及状況

Wikipedia (1 pages, 1 posts, 1 contributors)

編集者: Assemblykinematics
2020-10-13 06:51:07 の編集で削除されたか、リンク先が変更された可能性があります。

収集済み URL リスト