- 著者
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加藤 茂明
武山 健一
高田 伊知郎
北川 浩史
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 特定領域研究
- 巻号頁・発行日
- 2000
ステロイドホルモン核内受容体の転写制御機能を分子レベルで理解する目的に、性ステロイドホルモン受容体の転写促進能及び新たな核内受容体転写共役因子の検索・同定を試みた。多くの前立腺癌や乳癌の発症は、アンドロゲンやエストロゲンといった性ステロイドホルモンに依存する。性ステロイドホルモンが標的細胞内において機能を発揮する主要な経路は、核内受容体を介した転写制御である。このような転写制御には転写共役因子複合体群が必須であり、クロマチンリモデリングやヒストン修飾といった様々な異なる機能の複合体群が同定されてきている。性ホルモン依存性癌の発症メカニズムを解明するためには、未知の複合体群の同定とその複合体機能の解明が必要である。そこで我々はエストロゲン受容体α(ERα)と機能的に相互作用する複合体の同定を試み、スプライソソーム主要構成因子複合体を同定した。更に、この複合体とERαとの結合はMAPキナーゼによるERαのリン酸化に依存することを見出した。またこの複合体はERαの標的遺伝子群に対してスプライシング効率を調節する機能をもつ。このような機能は、乳癌に関わりの深いエストロゲンシグナルと成長因子シグナルとのクロストークがmRNAスプライシングの調節を介して乳癌発症に関わる可能性を示唆する。