著者
武山 健一 加藤 茂明 高田 伊知郎 北川 浩史
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

申請者はポリグルタミン伸長異常タンパクによるSBMAモデルショウジョウバエを用いた神経変性誘導を指標とした(1)分子遺伝学的アプローチおよび(2)生化学的アプローチによる候補因子探索と、(3)その性状解析からクロマチン構造変換機能異常によるエピジェネティック制御破綻への情報基盤を構築した。(1)分子遺伝学的アプローチによる新規神経変性制御因子の探索SBMAモデルショウジョウバエのpolyQ-AR誘導性の個眼神経変性を指標として、神経変性の変動が観察された25系統を単離した。中でも神経変性を顕著に回復する遺伝子としてRbfの同定に成功し、RbfによるE2F-1転写活性化を破綻させている事を見出した(Suzuki et al.,投稿中)。(2)生化学的アプローチによる新規polyQ-AR相互作用因子の探索クロマチン画分からのpolyQ-ARタンパク複合体精製はトランスジェニックショウジョウバエ個眼より精製後、MALDI-TOF/MS法あるいはLC/MS法にて同定する。その結果、ヒストンシャペロンやelongation factor、RNA結合タンパク等を同定した。3 候補因子の性状解析とエピジェネティック制御情報基盤の構築(1,2)で同定した相互作用因子のクロマチン構造変換能をヒストン修飾や構造、クロマチン構造変換能に着目した生化学的解析を行った。具体的にはヒストンアセチル化、メチル化、ユビキチン化およびリン酸化assay、MNase assay、クロマチンsupercoiling assayやdisruption assayによりin vitro系を構築した。これに必須材料となるヒストン八量体およびDNAとのクロマチン再構築は、HeLa細胞核抽出液およびrecombinant系を両者で整えた。
著者
加藤 茂明 武山 健一 北川 浩史 高田 伊知郎 大竹 史明 武山 健一 北川 浩史 大竹 史明
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

乳癌、子宮内膜癌、卵巣癌などのホルモン依存性癌の治療薬として用いられている「選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)」は、組織特異的な転写制御能を発揮するがその分子機構は明らかではない。我々は、SERM依存的にエストロゲン受容体ERαに結合するタンパク質群の精製を試み、ブロモドメインを有するBRD4を同定した。BRD4はpositive transcription elongation factor b(P-TEFb)と共に転写伸長反応を促進する因子であることから、SERMによる転写制御は、転写伸長の促進/抑制による可能性が示唆された。
著者
加藤 茂明 武山 健一 北川 浩史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

染色体構造調節因子複合体について、新規複合体の同定及び構成因子の検索や機能調節を調べる事を目的として、15年度は、前年度の1〜3の課題を継続するとともに、特に課題4に焦点を当て、研究を進めた。1.新規ゲノム発現制御複合体の同定:in vitro転写系及びクロマチンヌクレオソーム再構成系(当研究室で研究済み)を用いてHeLa細胞核抽出液から精製し、精製された複合体構成因子群をMALDI-TOFMASSにより同定した。更にcDNAスクリーニングにより各々の構成因子の機能を調べた。2.細胞種特異的複合体構成因子の同定:これら核内複合体の機能は細胞種特異的と考えられる。そこで既知複合体の既知構成因子を各種組織株に高発現させ、複合体を精製することで細胞種特異的構成因子を同定した。3.染色体構造調節複合体の機能調節の分子メカニズムの解明:最近ではアセチル化、ユビキチン化などの各種タンパク修飾によって機能調節される例が報告されているが、染色体構造調節複合体の構成因子のタンパク修飾による機能調節は全く不明である。そこで、既知核内レセプターコアクチベーター(p160、p68/ファミリー)を用い、各種培養細胞での他の複合体構成因子を同定し、構成因子の複合体構成能とタンパク修飾による機能調節の可能性を検討した。4.ショウジョウバエを用いた新規染色体構造調節のスクリーニング:申請者らは既に、ヒトアンドロゲン(男性ホルモン)レセプターを組織特異的に発現するショウジョウバエのラインを確立し、リガンド依存的な転写促進をGFPで検出することに成功した。本システムを用いることで哺乳類特異的染色体構造調節因子を発現する各種ラインを確立し、次に特定染色体部位を欠失した各種変異体を交配することで、染色体構造調節因子機能に必須な因子を分子遺伝学的にスクリーニングを行った。更に同定された因子をプローブに複合体を同定及び解析した。
著者
加藤 茂明 武山 健一 高田 伊知郎 北川 浩史
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

ステロイドホルモン核内受容体の転写制御機能を分子レベルで理解する目的に、性ステロイドホルモン受容体の転写促進能及び新たな核内受容体転写共役因子の検索・同定を試みた。多くの前立腺癌や乳癌の発症は、アンドロゲンやエストロゲンといった性ステロイドホルモンに依存する。性ステロイドホルモンが標的細胞内において機能を発揮する主要な経路は、核内受容体を介した転写制御である。このような転写制御には転写共役因子複合体群が必須であり、クロマチンリモデリングやヒストン修飾といった様々な異なる機能の複合体群が同定されてきている。性ホルモン依存性癌の発症メカニズムを解明するためには、未知の複合体群の同定とその複合体機能の解明が必要である。そこで我々はエストロゲン受容体α(ERα)と機能的に相互作用する複合体の同定を試み、スプライソソーム主要構成因子複合体を同定した。更に、この複合体とERαとの結合はMAPキナーゼによるERαのリン酸化に依存することを見出した。またこの複合体はERαの標的遺伝子群に対してスプライシング効率を調節する機能をもつ。このような機能は、乳癌に関わりの深いエストロゲンシグナルと成長因子シグナルとのクロストークがmRNAスプライシングの調節を介して乳癌発症に関わる可能性を示唆する。
著者
加藤 茂明 武山 健一 北川 浩史 高田 伊知郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

染色体構造調節複合体について、新規核内複合体群の検索及び機能解析を目的として、本年度は下記の3点に焦点をあて、研究を進めた。1.細胞種特異的複合体構成因子の同定:核内複合体の機能は細胞種特異的と考えられる。そこで既知複合体の既知構成因子を各種組織株に高発現させ、複合体を再精製することで細胞種特異的構成因子の同定を試みた結果、組織特異的な発現因子を含む複合体の存在が明らかになった。2.染色体構造調節複合体を共役する因子の分子遺伝子学的検索:染色体構造調節複合体と転写共役因子複合体の協調作用により、ヒストンタンパクの修飾やヌクレオソーム配列の再整備が行われ、その結果としてより転写制御反応を潤滑化もしくは難化すると予想されている。機能未知因子を検索・同定することを目的とし、ショウジョウバエに男性ホルモン受容体を発現するハエラインを確立している。そこで、特定染色体領域欠失、あるいは遺伝子が機能的に欠損したハエラインと掛け合わせることで、受容体機能に必須な共役因子を分子遺伝子的に検索・同定し、いくつかの候補因子を同定した。今後このようなアプローチによって同定された修補因子については、前述した生化学的アプローチにより、その核内複合体の同定、機能解析を行う予定である。3.染色体構造調節複合体構成因子群の生体内機能の解明:染色体構造調節複合体は、同様の活性を有するものが複数見出されており、in vitro系での解析では、その機能的生理的な差異は見出されないでいる。一方、多くの転写共役因子複合体構成因子群のノックアウトについては、胎生致死となるか、もしくは全く異変が見出されない例が多い。従って、これら複合体種特異的な機能を評価する強力なアプローチの一つとして、構成因子遺伝子欠損マウス(ノックアウトマウス)の作出が挙げられる。本年度は、染色体構造調節複合体種特異的構成因子に焦点を合わせ、Cre-loxP系を用いた時期・組織特異的遺伝子破壊法により胎生致死を回避し、当該因子の生体内高次機能を評価した。特に、前年度で同定された有力候補因子を同様な手法により、骨を中心に解析した。