- 著者
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桂 紹隆
- 出版者
- 龍谷大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2001
本研究の目的は、インド仏教論理学を代表する二人の巨匠、ディグナーガとダルマキールティの「認識論的論理学」の体系を、存在論・認識論・論理学・言語哲学という4つの視点から総合的に対比し、両者の相違点を明らかにすることによって、紀元後5世紀末から7世紀にかけて生じた仏教論理学の歴史的な展開を解明することにあった。過去4年間のディグナーガ研究の主眼の一つは、彼の漢訳でしか現存しない、初期の論理学書『因明正理門論』の詳細な解説を付した英訳を完成することにあった。その際、新発見のジネーンドラブッディの『集量論複注』の梵文写本を最大限利用することを試みた。しかし、この目的を達成するためには『複注』の批判的校訂本をまず完成するべきであるという結論に達して、前半部分の英訳・解説は完成しているものの、公表はさらに先に延ばすこととした。一方、新資料を用いて、ディグナーガ論理学の重要な術語を解明する論文を2篇発表した。すなわち、「喩例」と「主張」「同類群」「異類群」に関してである。ダルマキールティに関しては、彼の存在論を論じる論文を公表した。また、彼の主著『プラマーナ・ヴァールティカ』第三章「直接知覚章」の冒頭部分をマノーラタナンディンの逐語的な注釈とともに訳出し、ダルマキールティ認識論研究の資料として提示した。他に、彼の「修道論」「他心存在論証」「自性の概念」に関する論文3篇も完成したが、まだ公刊されていない。以上が、過去4年間の研究の概要である。既に公刊された論文の大部分を報告書として冊子にまとめた。今後の課題としては、先に述べたジネードラブッディ『複注』の校訂作業を継続して行っていく予定である。その結果、ディグナーガとダルマキールティの認識論・論理学の差異性がより正確に、より鮮明に明らかになることであろう。