著者
児玉 寛
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

ヴィーコ(1688〜1744)は、『弁論術講義』のなかで「訴訟類について」と題して、推定・定義・属性という3つの争点(status)ごとに、伝統的な修辞学のトポスの応用を例解している。このかぎりではキケローやクインティリアーヌスの弁論術と大差はない。しかし、ヴィーコにおける修辞学と法学との関係は、単純ではない。その結節点は、そのような例解にではなくて、伝統的な修辞学を「個別事情を考慮した自然的衡平の実現」という法学の構想に接合した点にある。ヴィーコにおける法学は、(1)ingeniumによって適切な中名辞を帰納的に発見すること、(2)中名辞による連結をエピケイレーマによって補強すること、(3)中名辞をメタバシスによって重層的に操作すること、を通じて可能となるというのが、本研究の結論である。Ingeniumとは、「遠く離れた相異なっている事物において類似的関係を見る能力」であり、これによって、大命題と小命題を連結する中名辞を見出す。三段論法の推論形式では、キケローと同じく5分肢説によるエピケイレーマが妥当とされ、小前提を補強するための論拠や敷衍が推論の説得力を強めるために導入される。メタバシスでは、論証を三段論法の二つの前提には含まれていない論点へと移行させる手法であり、これによって、大前提の射程が個別事情に応じて制約されて、より妥当な結論に導くことが可能となる。

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