著者
西野 友年
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究では2次元的な局所重率の積として表される試行関数を、2次元量子系および3次元古典系の変分関数として用いる数値くりこみ群手法を開発した。2次元量子系については、その代表例であるS=1/2正方格子XXZ模型に対して、3自由度の等方的IRF模型を変分波動関数として用い、少ない自由度で基底エネルギーの上限値を精度良く評価できることを実証した。特に、XY異方性が強い場合に、近似精度が改善される。3次元古典系では、その代表例である立方格子イジング模型に対して、162自由度の局所重率を敷き詰めた変分関数を適用してみた。この場合は最適化すべきパラメターの数が多いので、自動的にテンソル要素を改良する必要がある。試行錯誤の結果として、エネルギーの変分極小を正しく導く計算アルゴリズムの開発に成功し、相転移温度の精密評価が可能であることを実証した。以上2つの例では系が一様であった。これは、変分エネルギーの評価手段として「角転送行列繰り込み群」を用いたことによる制限である。そこで、秩序変数が空間変調を持つ場合も取り扱えるように「密度行列繰り込み群」をテンソル積型変分の形式中に取り入れる試みもはじめた。古典競合相互作用系の代表であるANNNI模型にこの新たな解析法を適用し計算を進めている。これまでに、標準的な相図として従来用いられて来た「悪魔のバラ」的な構造には、平均場近似による「整合的変調秩序相の強い安定化」が含まれている可能性などが得られている。これらの研究の副産物の一つとして、空間次元をひとつ下げた1+1次元対称/非対称確率的拡散系に対する光円錐内部での局所因子の足し上げに、角転送行列繰り込み群がそのまま応用できることが判明した。ただ、系の初期条件によっては、角転送行列繰り込み群で用いる密度行列が自明になり、繰り込み群変換に利用できない場合がある。この問題は、今後解決すべき研究課題の一つとしたい。

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2001 年、まだテンソルネットワークという用語はなかった https://t.co/Vxn5sIDG8D

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