- 著者
-
後藤 晃
帰山 雅秀
前川 光司
- 出版者
- 北海道大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2001
本研究では、北海道の水系に定着したブラウントラウトの生活史と回遊性、また本種の食性と近縁サケ科魚類との種間競争の実態を解明し、本種による在来淡水魚類への影響を評価する目的で、北海道南部の戸切地川、および中央部の支笏湖水系において生態的・集団遺伝学的調査を行い、以下の成果を得た。1.戸切地川において、ブラウントラウトは河口から約7km上流地点に位置する上磯ダム湖で主に生育し、雌では2歳で尾叉長275mm以上に、雄では2歳で172mm以上に達すると性成熟し繁殖に加わることが示された。2.本種の一部の個体は、秋季に尾叉長210-270mmの成長すると、スモルト化し、翌春に川を下って降海型(シートラウト)になること、また降海型は沿岸域で成長・成熟した後、繁殖のために河川に遡上することが確認された。3.本種は尾叉長200-300mmの個体ではトビケラ目幼生、陸生落下動物の他にフクドジョウなどの底生魚類を主に捕食することが示された。4.本種とニジマスが定着している支笏湖水系において、流入河川の美笛川ではブラウントラウトは主に底生型動物、ニジマスは遊泳型動物を摂餌し、2種は餌資源を分割利用していることが示された。一方、支笏湖内では、ブラウントラウトは陸生落下動物が少ない時期に、イトヨ、アメマス、ヒメマスなどの魚類を捕食することが明らかになった。5.餌ニッチの幅では、ブラウントラウトはニジマスより低い傾向を示した。6.ブラウントラウトによる特定魚種への捕食圧が大きくはなかったため、在来魚類の遺伝的集団構造に変化は認められなかった。