- 著者
-
神林 崇
- 出版者
- 秋田大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2001
(1)各年代と性別におけるオレキシン(ox)値の推移では、男性157名と女性115名で計272名の人の検体を測定した。年齢分布は生後2週間から79歳である。男性と女性の間で有意な差は認めず、また世代間での有意差も認めなかった。ナルコレプシーの5人の患者(6-68歳)は全例で測定限界(40pg/ml)以下であった。0歳児が12人含まれていたが、成人と同様の値であった。様々な疾患の検体の中でも、ギランバレー症候群(GBS)を除けばナルコレプシーでのみOXが低下していることは非常に特微的なことであった(Kanbayashi(a)2002)。OXの減少がいつ起こるのか興味が持たれるところであるが、6才と8才でナルコレプシーを発症し、OX低値であった2例と(Kanbayashi(b)2002,Tukamoto2002)、7才と10才で過眠出現後の反復睡眠脳波検査で入眠時のレム睡眠が出現する以前に(-例は脱力発作も出現する前)既にOXが低値の2症例を経験し報告した(Kubota2003)。また小児におけるOX検査の有用性を確かめるために、100例以上の小児疾患でのOX値を測定し、疾患特異性を検討し報告した(Arii2003)。ナルコレプシーの発症のピークは14才であるので、早期発見/治療開始のためには重要な報告と考える。(2)自己免疫性神経疾患におけるOX値の研究では、17人の患者から脳脊髄液の提供を受けた。GBSが10人、多発性硬化症が7名である。対照患者群として、計30名の患者を選んだ。脳脊髄液中のOX値は対照患者とこれまでに報告されている健常人(280pg/m)では差が無く、多発性硬化症の患者も対照患者と差がなかった。一方GBSの患者では対照患者と比べて有意にOX値が低下していた(p<0.01)。しかしながら測定値の分布は大きく、正常値の患者もみられた。200pg/mlで区分するとGBSの患者では10名中4人が200pg/ml以下であり、一方、対象患者と多発性硬化症の患者では37名中の1名のみが200pg/ml以下であった(Kanbayashi(c)2002)。現在も検体を集めており、GBSが計23検体まで増えているが、4名がナルコレプシーと同様に測定限界以下であった。Fisher症候群とCIDPもあわせて検討中である。低値の症例は重症例が多いことと、症状の改善と共にOX値も正常化することが判明している。2例では過眠の度合いを調べる検査も行い、入眠潜時の短縮を認めた(Nishino2002)。自己免疫疾患であるGBSにて髄液中のOX値の一時的な低下の機序を明らかにすることを通じて、ナルコレプシーでの永続的な脱落の原因解明の一助になると考えている。