著者
塩崎 謙
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本年度は,前年度に引き続きトポロジカル結晶絶縁体・超伝導体の分類問題について取り組んだ.トポロジカル結晶絶縁体・超伝導体とは固体結晶が有する空間群の対称性によって守られた自由フェルミオンのトポロジカル相である.時間反転対称性,粒子・反粒子対称性といった基本的な対称性と空間群対称性が絡み合うことにより,莫大な数の独立な対称性クラスが存在する点に問題の難しさがある.固体物質のトポロジカル分類表の確立に向けて網羅的かつ系統的な分類問題の解決法を見出すことは早急に解決すべき課題である.本研究ではまず,空間群の対称性のみによって守られたトポロジカル結晶絶縁体に注目した.バルクのトポロジカル非自明性に起因したギャップレス表面状態の保護に寄与できる空間群対称性は,表面の存在と両立する2次元的な空間群対称性に限り,17種類の異なる2次元空間群が存在する.数学のK理論を用いることにより17種類の2次元空間群に対するトポロジカル結晶絶縁体の分類の計算を行った.その結果,いくつかの非共形な空間群対称性(点群操作に半端な並進を伴う空間群)によって守られたトポロジカル結晶絶縁体はZ_2の分類を示すことが新たに分かった.また対応する表面状態は,2つの自由度がある種のメビウスの帯のような構造を取っており,メビウスの帯がねじれる点において縮退が守られているといった新しいタイプの機構により表面状態が守られていることが分かった.

言及状況

Twitter (1 users, 2 posts, 0 favorites)

トポロジカル物質の登場により、トポロジカル分類表の確立に向けて網羅的かつ系統的なことをするためにはトポロジーをバリバリに使わないといけないという感じのことが書いてある → https://t.co/tT3A0R9I6D
トポロジカル物質の登場により、物性論の世界でも、トポロジーをバリバリに使って、K理論まで使った研究をしている事が伺える。 → https://t.co/tT3A0R9I6D

収集済み URL リスト