- 著者
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木村 昭郎
原田 浩徳
大瀧 慈
- 出版者
- 広島大学
- 雑誌
- 特定領域研究
- 巻号頁・発行日
- 2002
原爆被爆者の高令化に伴い骨髄異形成症侯群(MDS)の増加がみられているが、広島市内の4病院において過去15年間に診断されたMDSをリストアップし、87例の被爆者MDSを集積した。被爆者情報は研究代表者の所属する広島大学・原医研が構築した被爆者データーベース(13万人)によって確認し、個人骨髄線量は当研究所が構築したABS93Dによって検索し、放射線被曝による発症相対リスクの統計学的解析をすすめている。予備的結果としては、以前院内統計によって得られた1Svあたり2.5よりさらに高い値が得られている。次に、被爆者MDSでは白血病関連遺伝子AML1遺伝子のラントドメインに高頻度に点突然変異を認め、変異を認めた例の被ばく線量は比較的低線量と考えられた。そこで、標本等の試料を過去にさかのぼって収集し、被爆者10例を追加して解析をすすめた。また、AML1遺伝子のラントドメインよりC末端側についても、非被爆者を含めて点突然変異を5例に見出した。ラントドメイン以外に変異を見い出したのは最初であり、このうちの1例は点突然変異により発現されるAML1分子は正常のものよりも大であった。AML1の変異は放射線誘発MDSに特異的である可能性を有しておりAML1変異と被爆との関係を明らかにすることで、放射線誘発MDSの発症機構を解明することが出来ると考えられる。