著者
前田 良三
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

1.ルートヴィヒ・クラーゲスの比喩論・言語論における美的身体性とメディアの問題:クラーゲスの『リズムの本質』が端的に示しているように、彼のリズム論は都市生活の機械的・無機的なタクト(拍子)に対するアンチテーゼとして構想されているが、それと同時に、19世紀的な個的・主観的身体性を超克する契機としての集団的リズムの発見という点において、複製技術的メディアによって可視化されたリズムの表象と通底している。2.ゲオルゲ派のメディア戦略と複製技術による自己演出:ゲオルゲの美的自己演出の戦略は、逆説的にも大都会的・技術メディア的な知覚が支配的になったヴァイマル期の視覚文化を前提としている。大衆文化とエリート文化がいわば同一平面上に並列的に展示され、「触覚的」(リーグル、ベンヤミン)な知覚の対象とされるとき、ゲオルゲ派の美学は自らの詩的世界のみならず、詩人としての社会的存在をも図(大衆文化)に対する文様=ゲシュタルトとして示そうとするものであり、この点においてすぐれて20世紀的といえる。3.伝統主義美学とメッセージの暗号技術:伝統主義者の美学において唐突に復活する「形式」という主題は、非大衆的メッセージ伝達形式として詩というメディアをあらたに発見する。そこでは日常的コミュニケーションに対する暗号として詩が表象されている。4.保守的文学者集団と技術者集団の男性同盟的組織原理:ゲオルゲ派にもっとも典型的に見られる男性同盟的かつカリスマ指導者+弟子という組織構造は、反近代主義的・宗教的な背景を有するが、同時に専門家集団としての技術者集団とその排他性・内的規律といった点で共通性をもつ。

言及状況

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こんな研究ありました:保守的想像力とテクノロジー-ドイツ「保守革命」のメディア文化史的再検討(前田 良三) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/14510596

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