著者
安藤 興一 高橋 千太郎
出版者
独立行政法人放射線医学総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

放射線医学総合研究所・重粒子線がん治療装置を利用し,麻酔下において炭素線(290MeV/u,5mm-Spread out Bragg Peak)を,マウス頭頂部(8週令:C57BL)から5mmまで均一に局所照射を施した。炭素線30Gyを照射し,照射3ヶ月後にwater-mazeを用いた記憶・学習障害の解析を行ったところ,記憶獲得過程の障害および作業記憶(短期記憶)の障害が認められた。また病理組織学的解析により,照射群において海馬CA1-3領域の神経細胞が39-49%減少していることが判った。一方,胎児期にX線1.5Gy被ばくした場合においても,生後8週令において空間認知障害が誘発されたが,その障害は一様ではなく,軽度,中度および重度の学習障害群に大別された。重度の記憶障害群について病理組織学的検討を行ったところ,海馬神経細胞層(CA1-3領域)に異所性細胞群が高頻度に認められた。また異所性細胞群が認められた海馬領域では,記憶に重要な役割を持つアセチルコリン(acetylcholine)受容体の特異結合の減少が生じていたことが判明した。以上の結果より,放射線脳局所照射モデルおよび胎児期放射線被ばくモデルは,ともに学習・記憶に重要な役割を担っていることが知られている海馬領域の特異的変化が生じていたが,その高次脳機能障害のメカニズムは異なることが判明した。また記憶・学習障害は,海馬神経細胞の減少や異所性細胞の出現により,海馬内の神経情報伝達の阻害が生じている可能性があり,そのことが放射線による記憶・学習障害の要因であることが推察された。また,シュードウリジンやメラトニンなどのビール含有成分がマウス全身照射による造血器・腸管障害を防護することが判明したので,これらの成分による放射線能機能障害に対する防護効果について検討している。

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