著者
藤原 慶子 高橋 知之 高橋 千太郎
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.19-26, 2016 (Released:2016-07-06)
参考文献数
11
被引用文献数
4

The accident at the Fukushima nuclear power plant in 2011 caused the release of large amounts of tellurium (Te) isotopes, with radio-cesium (Cs) and radio-iodine (I), into the environment. The total amounts of 127mTe and 129mTe released from the nuclear power plant were estimated as 1.1 × 1015 and 3.3 × 1015 Bq, respectively. At the location where the deposition of 129mTe was relatively large, the ratio of the radioactivity of 129mTe to that of 137Cs reportedly reached 1.49 on June 14, 2011. Since 127mTe has a relatively long half-life, it possibly contributed to the internal radiation dose at the early stage after the accident. In this paper, the ratio of the committed effective dose of 127mTe to that of 137Cs after the oral ingestion of rice was estimated by using various reported parameters. The relevant parameters are: 1) the deposition ratios of 127mTe, 129mTe, and 134Cs to 137Cs; 2) the deposition ratio of 127mTe to 129mTe; 3) the transfer factors of Te and Cs; and 4) the effective dose coefficients for 127mTe, 129mTe, 134Cs, and 137Cs. The ratios of the committed effective dose of 127mTe to that of 137Cs were calculated for adults after a single ingestion at the time of the rice harvest. The ratio was 0.45 where the 129mTe/137Cs in the soil was higher and 0.05 where the level of 129mTe/137Cs was average. The ratio of the committed effective dose from 129mTe and 127mTe to that from 137Cs for one year reached 0.55 and 9.03 at the location where the level of 129mTe/137Cs in the soil was higher. These data could indicate that radioactive Te should not be disregarded in reconstructing the internal radiation dose from food for one year after the accident.
著者
藤原 慶子 山崎 敬三 高橋 知之 高橋 千太郎 北川 晃三 神藤 克人
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.282-285, 2012 (Released:2013-12-17)
参考文献数
8
被引用文献数
1

After the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident, many people are concerned about the contamination of radioactive substances in their ordinary surrounding environment. In this study, we determined the levels of radioactive contamination with 137Cs in towels, very common textile products in our life, after exposing those to the soil collected from a farm field near Fukushima city. Three kinds of towels made from the same cotton fiber with different thickness were exposed to the soil under dry or water-suspension conditions. The radioactivities of 137Cs retained/absorbed were 30-50% of the loaded radioactivity per gram weight of the towel. When their weight and absorbency are taken into consideration, the differences in thickness did not so much affect the above values. Under standard washing condition, which mimic those with household washing machine, almost all the radioactive cesium were removed from the towels contaminated under the dry conditions, whereas only 50-70% were removed when the towels were contaminated under the wet conditions. A commercial soil-release treatment (Preshade-SR) didn't reduce the contamination under both dry and wet conditions, although processing the towels with silver nano-particles did.
著者
松岡 理 安藤 久隆 小沢 正基 高橋 千太郎 小木曽 洋一 稲葉 次郎 二之宮 和重 久松 俊一
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.36, no.11, pp.997-1020, 1994-11-30 (Released:2010-03-08)
参考文献数
102

Puに対する社会的関心が高い。たしかにPuの幾つかの同位体は核分裂性であり,また放射線毒性の高い物質の一つである。しかし,その実態に対する理解は必ずしも十分ではなく,そのことのゆえ,ときに一部から意図的に部分的誇張を含む説明がなされたりすることさえある。 本「特集」では,Puの安全性を考える基礎として,生体に対する影響を中心に,放射線毒性学の観点からPuの実像を概観する。
著者
安藤 興一 高橋 千太郎
出版者
独立行政法人放射線医学総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

放射線医学総合研究所・重粒子線がん治療装置を利用し,麻酔下において炭素線(290MeV/u,5mm-Spread out Bragg Peak)を,マウス頭頂部(8週令:C57BL)から5mmまで均一に局所照射を施した。炭素線30Gyを照射し,照射3ヶ月後にwater-mazeを用いた記憶・学習障害の解析を行ったところ,記憶獲得過程の障害および作業記憶(短期記憶)の障害が認められた。また病理組織学的解析により,照射群において海馬CA1-3領域の神経細胞が39-49%減少していることが判った。一方,胎児期にX線1.5Gy被ばくした場合においても,生後8週令において空間認知障害が誘発されたが,その障害は一様ではなく,軽度,中度および重度の学習障害群に大別された。重度の記憶障害群について病理組織学的検討を行ったところ,海馬神経細胞層(CA1-3領域)に異所性細胞群が高頻度に認められた。また異所性細胞群が認められた海馬領域では,記憶に重要な役割を持つアセチルコリン(acetylcholine)受容体の特異結合の減少が生じていたことが判明した。以上の結果より,放射線脳局所照射モデルおよび胎児期放射線被ばくモデルは,ともに学習・記憶に重要な役割を担っていることが知られている海馬領域の特異的変化が生じていたが,その高次脳機能障害のメカニズムは異なることが判明した。また記憶・学習障害は,海馬神経細胞の減少や異所性細胞の出現により,海馬内の神経情報伝達の阻害が生じている可能性があり,そのことが放射線による記憶・学習障害の要因であることが推察された。また,シュードウリジンやメラトニンなどのビール含有成分がマウス全身照射による造血器・腸管障害を防護することが判明したので,これらの成分による放射線能機能障害に対する防護効果について検討している。
著者
高橋 知之 福谷 哲 藤原 慶子 木野内 忠稔 服部 友紀 高橋 千太郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

東京電力福島第一原子力発電所の事故では大量の放射性核種が環境中に放出された。このうちTe-127mの半減期は約109日と比較的長く、IAEAの報告書に記載された土壌ー農作物移行係数を用いて評価すると、特に福島第一原発から南方向では、放射性テルルの内部被ばくへの寄与が放射性セシウムに比べて無視できるレベルではない可能性があった。よって、安定テルルと安定セシウムを同時に添加した土壌を用いて植物栽培実験を行い、それぞれの移行係数を求めた。その結果、テルルの移行係数は既報値よりも低く、実際の放射性テルルの線量の寄与は既報値を用いた評価よりも十分に低くなる可能性があることが明らかとなった。
著者
沖永 希世 高橋 千太郎 津越 敬寿 工藤 善之 古谷 圭一 荒木 庸一
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 = Journal of Japan Society for Atmospheric Environment (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.12-20, 2000-01-10

地下生活環境における空気質の特性に関する知見を得るために,東京都の営団地下鉄銀座線の駅構内における空気中浮遊粒子状物質の質量濃度,化学組成,並びに粒子径分布について検討した。ダストカウンターによって測定されたSPMの質量濃度の近似値は,おおむね0.06〜0.12mg/m^3であり,いずれの駅でもビル管理法の基準値を下回る結果であった。地下鉄駅構内SPMの大気質量濃度の近似値には各駅ごとに顕著な変動が見られたが,その変動パターンは測定日にかかわらず比較的一定であった。一方,地下鉄駅近傍の地上部分の質量濃度には駅間の変動が認められず,各駅間でみられた質量濃度の差は,換気状態や空調システムといった各駅固有の要因によるものと推察された。SPMの粒子径分布の特徴は粒径範囲0.3〜0.5μmの相対濃度が測定したすべての駅構内で近傍の地上より低い値を示した。一方,粒径範囲0.5〜1.0,1.0〜3.0μmのSPMの相対濃度は駅講内の方が近傍の地上より高い値を示した。すでに大規模な地下街においても,同様な傾向が見いだされており,一般的な地下空間におけるSPMの粒子径分布の特徴と考えられた。駅構内で捕集されたSPMは,SEM-EDXおよび蛍光X線分析により地上で採取されたSPMに比べて相対的に金属ヒューム状粒子が多く,その主成分として鉄が多く含まれていることが示された。