著者
樋脇 治
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

体内時計に関連する脳機能に対して電磁界が及ぼす影響について研究を行った。主に、パルス磁界を大脳皮質に照射したときの脳機能の特性について実験および理論的な検討を行った。神経細胞がパルス磁界により膜電位が変化するモデルを用いたシミュレーション解析結果に基づき、大脳皮質がパルス磁界に反応する特性について検討を行なった。大脳皮質には、主に信号の入出力の役割を担っている錐体細胞が大脳皮質表面に垂直に走行しているが、この錐体細胞のパルス磁界に対する反応特性について検討した。その結果、パルス磁界により二次的に誘導される電界の大脳皮質に垂直な成分が錐体細胞の膜電位変化に大きく関与しており、誘導電界の大脳皮質に垂直な成分の大きさの分布を算出することにより大脳皮質がパルス磁界により影響を受ける部位を検出できることを明らかにした。この結果に基づき、一次運動野を対象としてパルス磁界による刺激実験を行い、腕および手の誘発筋電図を指標としてパルス磁気が脳活動に与える影響を評価した。被験者の頭部右側にパルス磁気を8字型コイルにより照射し、左の腕および手から誘発筋電図を表面電極により計測した。その結果、一次運動野内において対象の筋を支配すると推定された部位における誘導電界の脳表面に対する垂直成分が最大となるようにパルス磁気の照射を行ったときに対象の筋に大きな振幅の筋電図が計測されることを確認した。これらの結果より、パルス磁気を脳に照射したとき、大脳皮質のそれぞれの部位における誘導電界の脳表面に対する垂直成分が大脳皮質の機能に影響を与える主な要因であることを見出した。今後、この知見を基にして視交叉上核を含む体内時計システムへのパルス磁界の影響について研究を継続して行なう予定である。

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