著者
篠田 知和基 吉田 敦彦 丸山 顕徳 松村 一男 中根 千絵 鈴木 正崇 不破 有理 服部 等作 山田 仁史 立川 武蔵 後藤 敏文 荻原 真子 木村 武史 後藤 明 廣田 律子 近藤 久美子 竹原 新 坂井 弘紀 諏訪 春雄 小松 和彦 鷹巣 純 栗原 成郎 依田 千百子
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

世界神話の基本的な二元構造を日本神話、ギリシャ神話、エジプト神話、インド・イラン神話、オセアニア神話、シベリア神話、アメリカ神話などにさぐった。明暗、水中の火、愛の二元性、罪と罰、異界と常世などのテーマでシンポジウムをおこない、それぞれの論文集を刊行した。生死、善悪の問題はそのつど検討された。最後は聖と穢れについて総括討論会をおこなった。その結果、世界神話は聖なるものを水中の火のような矛盾した概念のなかに追及するものであることがあきらかになった。
著者
樋脇 治
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

近年、磁場が生体へ及ぼす作用のひとつとして脳の松果体で産生されるホルモンであるメラトニンの量が磁場により影響を受けることが明らかにされてきている。通常メラトニンは昼間よりも夜間に盛んに産生されるが磁場照射により夜間のメラトニン産生が抑制されることがラット等を使った実験により確かめられている。本研究では、生体への静磁場・変動磁場の影響について特に体内時計の中枢である視交叉上核の電気活動に着目した。磁場が生体へ影響を及ぼす過程には視交叉上核が重要な位置を占めていると考えられるが、まだ磁場と視交叉上核の関連についてはほとんど研究が行なわれていない。まず、静磁場の視交叉上核の電気活動への影響を調べた。強度100μTの静磁場を体軸方向・水平面内で体軸と垂直方向・鉛直方向の3方向に生成した。立ち上がり10秒・立ち下がり10秒・期間5分の磁場を30分間隔でそれぞれの方向に照射した。このときの視交叉上核における自発インパルス数を計測した。その結果、視交叉上核のインパルス数は吻側・尾側・右側・左側方向の水平方向の磁場照射に対して増加するものの背側・腹側方向の鉛直方向の磁場照射に対しては変化しなかった。次に、商用周波数磁場の照射実験として、50Hz,Peak-to-Peak40μTの磁場を照射する実験を行った。地磁気と同程度の強度である40μTの鉛直下向きの直流磁場に加え、50Hz磁場の方向が、体軸と平行な方向(X軸方向)、水平面内で体軸と垂直な方向(Y軸方向)、鉛直方向(Z軸方向)になるように磁場を照射する実験をそれぞれ行った。その結果、Z軸方向に50Hz磁場を照射した実験では視交叉上核の概日リズムに変化は見られなかったが、XおよびY軸方向に50Hz磁場を照射した場合,視交叉上核の慨日リズムに顕著な乱れが観察された。
著者
金 聖哲
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

北朝鮮の核外交は、その体制の不調和の結果であると同時に、まさに開放の寸前である体制をわずらわす対外的ディレンマの結果である。体制の内的分化は、非公式的領域(官僚腐敗、闇経済、個人主義など)を生み出して、体制運営全体に不調和をもたらす結果となった。こうした状況の中、北朝鮮は、これまでにない大打撃を被った経済の回復のための必死の翌力をして、その努力は、2002年7月に採択され、以降継続している新たな経済対策として結実した。しかしながら、(日本と韓国を通じて)回り道をして米国にアプローチするという外交が失敗に帰し、以来、北朝鮮は核のゲームに取り込まれてしまっている。2006年10月9日の核実験により絶頂に達した北朝鮮の挑発的な外交は、主要敵国である米国との交渉を目的としたものだった。朝鮮半島における米国の核のプレゼンスと、冷戦期に繰り返し脅威となった核兵器使用の可能性は、北朝鮮の核開発プログラムへの動機に火をつけたのである。しかしながら、北朝鮮の核保有国への道のりをすべて理解するためには、1990年代の決定的に重要ないくつかのターニング・ポイント、すなわちソ連の崩壊と北朝鮮の飢饉、についての分析が必要である。これらの事態に対処するために、国家の存続が最も緊急な事柄となり、次に、この状況が先軍政治を誕生させたのである。米国との戦争(朝鮮戦争)とその後の軍事力の増強の経験のために、北朝鮮にとって、厳しい状況に適応していく中で、軍の重要性を強調することは自然なことであった。先軍政治は、今や国内及び対外政策を貫き通すことになった。北朝鮮の核兵器開発と核実験は、このことがもたらした結果の頂点であると言える。北朝鮮の挑発的な政策は、外交ゲームの中で繰り返された損失への反応によって発生した生存目的の抑止力であると言える。合理的選択に関する心理学的分析によると、その認識した損失は、リスクを避ける選択の代わりにリスクを冒す選択を行為主体に強いる。このように、体制全般の不調和の中で発生した適応過程における失敗が、北朝鮮として「一か八か」(double-or-nothing)的な政策に依存させる役割を担った。同時に、金正日のリーダーシップの特性、すなわち、国内及び対外政策のすべてに面において細心過ぎるほどの関心を向けるような特性を考慮すると、間違いなく、核ゲームは彼の選択であったはずだ。政治家のリーダーシップをコンピューター・オペレーターになぞらえることが、この状況では適切であろう。様々なタイプのコンピューター・プログラムのオペレーターとしての金正日は、最高意思決定者であり、しかもなお、彼の決定は、ハードウェアと、より深い背景で行われでいるため外から見えないオペレーションの両方に依拠しなければならなかったのである。金正日はその背景要因に変化をもたらすため自分の影響力を発揮してきた一方で、その背景要因が今や直近の政策的選択の幅を制約しているのである。
著者
黒木 進
出版者
広島市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本年度は、以下の項目について研究を行った。(1)プロトタイプシステムの構築と評価前年度までに行ってきたプロトタイプシステムの構築を引き続き行った。本年度は特に、多次元インデックスの構築と改良を中心に行った。本研究においては、位置や時刻は数値化された座標として表現されている。よって、データベースに蓄積されたテキストは、それぞれが含む位置や時刻を表す語句を数値化して表現された多次元空間の座標値によって参照される。そのため、テキスト集合に対して時間的、あるいは位置的な検索を行う際には、数値化された多次元空間の座標値に関する多次元インデックスの効率化が重要である。このような観点から、多次元インデックスの構築法について研究を行った。ツリー型のインデックスを想定して、ツリーのノードの持つデータの種類と個数に関して検討を行い、1ノードあたりのデータ量を圧縮することによって、検索に要するデータアクセスの回数と時間に関する効率化を図ることができた。また、この考えをさらに発展させて、より次元の高い多次元インデックスを用いる画像の検索にも応用を試みた。(2)位置や時刻に関する知識の発見テキストに含まれる位置や時刻を数値化するためには、これらの情報を数値に変換するための規則が必要である。しかし、初見の位置や時刻については、そのような規則による変換を行うことができない。そのため、文脈情報を利用してそのような規則を推定しなくてはならない。そこで、テキスト中に出現する初見の位置や時刻とその他の位置や時刻の共起関係を基にして初見の位置や時刻を推定する方法について検討を試みた。しかし、これについてはあまりよい結果が得られなかったので、今後引き続き検討を行いたいと考えている。
著者
齊藤 稔 青木 孝夫 欒 竹民 幣原 映智 長田 年弘 安西 信一 原 正幸 金田 晋
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究は東西の伝統的学芸の価値概念である西洋の自由学芸、日本の芸道、中国の六芸を対象とし、解釈学的に比較することを意図した比較芸術学的共同研究であり、広島市立大学をはじめ広島大学その他の大学の専門家の協力をえて推進した。ヨーロッパにおいては古代から中世を経て近世・近代に至るまで7自由学芸(septem artes liberales)、文法、修辞学、弁証術、数学、幾何学、天文学、音楽はアルス(ars)として、技術・芸術と学問の不可分の領域と見なされ、哲学とともに人間性を探究するための、また教育と教養を培うための学芸であった。古代ローマ時代のキケロはそのような教育と教養が人間存在にとって必要不可欠な徳としての気品(dignitas)を生み出すことを強調し、ルネッサンスにおいてペトラルカは人間社会のためにそのような倫理の必要を説いた。これはまた造形芸術の美質であり目的でもあった。他方レオナルド・ダ・ヴィンチは絵画を自由学芸と同列に置き、絵画は学問であるとして「絵画学」(scienza della pittura)を主張した。というのは絵画は遠近法や解剖学や光学などを本質的に必要とするからである。日本の芸道は民族的な美的意識であり、芸術の思念と実践を統合する価値概念であった。これはあらゆる美的な生活芸術を貫く芸と術の道としての芸術的営為であり、教化されるべき様式として把握された。また高い徳と美的に教育された人間存在の教養を形成するために求められた。そこでは制作や表現においても、享受や理解においても、つねに帰一すべき根源的自然、あるいは神的超越者を自覚して精進する。芸道は真・善・美を求める人にとって高徳の人間形成のための、また美的形成、美的教養として望まれる必須のアルス(学芸)であった。中国ではさらに古くから六芸として、礼、楽、射、御、書、数の教養思想があり、基本的には人間として修得すべき教養や道徳であり、技芸や学芸であった。その修得は文学や哲学から詩や書・絵画の技術的習練にも結びついた。それは絵画では書画同体、十八画法などの奥義の技法をも含んでいる。本共同研究はこれら3つの概念を比較学的に研究し、それらの類似と相違を明確にするように試みた。それによって3つの美的システムが学芸の領域に属するだけではなく、真・善・美の価値意識の普遍的理念を伴う人間生活全般に深く関わることを理解することができた。そしてこの総合研究の成果は学際的研究への貢献として、それら伝統的学芸とその解釈が美的真実への感性的理性的認識に到達するものであることを示しえたと考えている。
著者
田中 利幸
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、米陸軍航空軍が、1930年代からの伝統的な戦略爆撃論である「精密爆撃論」にもかかわらず、第2次大戦中の爆撃活動において、いかに公式論から乖離し、無差別爆撃へと急速に変容して行き、最終的には広島・長崎に対する原爆投下による無差別大量虐殺を犯すまでに至ったのかを分析することに目的をおいた。その変容を、米軍の軍事指導者、政治家のレベルでの戦略、政策の変化のみならず、国民の倫理観の変化という観点からも分析を試みた。
著者
中嶋 健明
出版者
広島市立大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

幼い子供を対象とする犯罪から子供たちを守るため、CGやVR技術を用い、地域全体の監視性と関心を高め、犯罪の起こり難い環境を作り、もし犯罪に巻き込まれた時には、子供たち自身の力で危機的な状況から、インタラクティブなゲーム感覚のシミュレーション装置による繰り返し訓練を行う事によって危機回避が出来る様にし、大切な子供たちの命を守る事に役立てようと試みた。研究代表自身の子供たちの通う小学校の校長・副校長あるいはPTAや地域の子ども会や町会など、子供を取り囲む各々の役割を持つ組織や個人の方たちを取材し、犯罪が起こりそうな特有な環境が判明した。神社や裏路地など数点に絞り実地調査を行った。また、彼らの意見から、ゲームをするように未就学の幼児でも簡単に操作が可能で、なお且つのめり込む様に興味を抱かせる環境を提供するためには、パソコンの画面だけではなく、もっと直感的なインターフェースが必要であることが判明した。最も親しみがあって実体のあるインターフェースとして玩具を取り上げることとした。ミニチュア模型のジオラマの様な、町や郊外の風景を再現し神社や空き地を配置して通学路を作成した。レールの上を動く車体の先端に取り付けた超小型の車載ビデオカメラの映像(被体験者の目線)に、インタラクティブに襲い掛かる犯罪者の映像を合成し、被体験者は足踏みマットの上を大きな声を張り上げながらダッシュして逃走を試みる。走る速さ(足踏みの回数/秒)と、マイクロフォンから入力された声の大きさ(dB)から、犯罪者から逃げ切れたかを判定する。それによって犯罪の起こり易い場所の理解と、犯罪から身を守るための対処行動の方法を身に着けてゆく。装置自体は研究期間内に完成させることが出来、実験の反響から装置の重要性は確認された。今後は実験を繰り返し行って行き、併せて普及に努める。
著者
高橋 博子
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008-04-08

本研究の目的は、広島・長崎で収集された被爆資料が、米国政府が冷戦政策の中でどのように利用され、いかなる核時代が作られていったのかを、近年公開された資料や広島・長崎の被爆者や核実験によるヒバクシャの証言の分析に基づいて浮き彫りにすることにある。核兵器という人類の生み出した兵器が、非人道的であるのはいうまでもないことであり、本研究では、単に核兵器の開発史や核戦略史をたどるだけではなく、核兵器による被害者を視野に入れた、米国の核開発史の全体像を具体的、かつ実証的に検討した。
著者
渡辺 智恵 青木 信之
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

英語eラーニングにおける自律的学習者の養成を支援するための「eポートフォリオ」を構築し、その有効性について検証を行った。その結果、統計的には有意な結果ではなかったが、ログイン回数が多く、学習時間が長く、教材消化率の高い受講者、すなわち熱心な受講者はeポートフォリオをより利用する傾向があり、逆に、ログイン回数が少なく、学習時間が短く、教材消化率の低い受講者はあまり利用しないことが明らかになった。
著者
ロバート ジェイコブズ ブロデリック ミック
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

放射線被ばくの健康面への影響に関する知見は多くあるが、本研究は放射線被ばくの社会的・文化的影響について歴史的・比較文化的検証を行った点において、初の研究であると言える。世界各地で放射線に被ばくした人々やその家族、また核実験へ参画した人々などへ数多くの聞き取り調査を実施した。社会的・文化的影響の一端としては、仮設住宅への移住、食生活の変化や制限、宗教や伝統の分裂・崩壊、伝統的知識の途絶などが挙げられる。被ばくの実相は家庭内においても、子や孫の世代へ受け継がれぬまま隠される傾向がみられ、個人、家族、地域社会のあらゆるレベルにおいて社会的・文化的崩壊を招くことが分かった。
著者
田浪 亜央江
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

土地や社会的よりどころを失ったパレスチナ人にとって文化はアイデンティティの表現手段であるとともに、占領や抑圧に対する抵抗手段である。他方で国際社会とりわけ援助機関からは「平和構築」の手段とみなされ、しばしば管理の対象となる。本研究では、パレスチナ文化のもつこうした背反的な機能やジレンマをパレスチナ人自身がいかに自覚しつつ、自分たちの文化活動にどのように向き合っているのかを探った。そしてパレスチナ社会内部への問い返しや自己批判を行いつつ、こうした状況を皮肉や嘲笑の対象として新たな作品創造のモチーフとする文化表現のあり方を捉えた。
著者
川本 佳代
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

これからの社会において論理的思考力は重要であり,その育成には数理的説明文を書く経験の蓄積が有効である.その際,数理的説明文を評価する必要があるが,適切に評価する方法が存在しない.本研究では,蓄積された数理的説明文の分析を元に,数学の専門家が高くあるいは低く評価する数理的説明文がどのような特徴を持つのかを明らかにした.これに基づいて作成した評価基準を導入し,学習支援者が学習者の数理的説明文を評価する上で役立つ,論理的思考力評価支援システムを開発した.
著者
青木 信之 鈴木 繁夫 渡辺 智恵 池上 真人 松原 緑 榎田 一路 寺嶋 健史 汪 曙東 高橋 英也 阪上 辰也 江村 健介
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2018年度(平成30年度)については、本科研の最大課題について大きな知見が得られた年度となった。まず学生に実施したアンケート結果については、多くの大学生は長期休暇期間後の英語力低下は感じている、学習不足も感じている、しかし休暇期間中の学習機会の大学による提供については積極的ではなく、学習を管理されることについてはほとんど望まないということであった。一方、少人数ではあったが、長期休暇期間中に英語e-ラーニングを実施した大学では、学習量は学期中よりかなり少なかったものの、それでも受講しなかった学生達に比べて、英語力が向上あるいは維持されるという結果が示された。本研究で取り組もうとしてきたのは、英語力を向上させるには(特にある程度の基礎力をもった大学生の場合は)、集中的に大量の学習をさせることが必要であり、そしてそれをe-ラーニングによって実施することが可能であるということであった。本科研では、それに加えて、教養教育期間中にしっかりと英語力を上げ、そしてそれを維持させるには、長期休暇期間中の学習不足を克服する必要があり、それこそe-ラーニングの出番であることを証明するということで主目的であった。つまり、本科研の最大のポイントは、長期休暇中の英語力低下を防ぐという点であり、そういった意味では大きな前進があったと考えている。
著者
齋藤 夏雄 伊藤 浩行
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

正標数の代数的閉体上において定義された滑らかなdel Pezzo曲面のF分裂性について研究を行った.次数2のdel Pezzo曲面について調べ,標数2および3のときにのみF分裂性を持たないものが実際に存在することを示し,その特徴づけを与えた.特に標数が3のとき,F分裂性を持たないdel Pezzo曲面は一意的に定まることを明らかにした.さらに,次数2で標数3のdel Pezzo曲面F分裂性を持たないものが得られるような射影平面のブローアップを考えたとき,その中心となる7点の配置を完全に決定した.
著者
武田 悠
出版者
広島市立大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2018-08-24

1978年の先進国首脳会議(サミット)において発出されたハイジャックに関する声明の形成と実施、及びそれらに対する日本の関与を、外交文書等に基づいて検討する。当時、西側世界有数の経済力を持つに至った日本は、経済問題のみならず政治問題でも国際秩序への関与を求められた。先進国が標的となっていたハイジャックもその最初期の事例であった。サミットを通じた日本の関与の実態を明らかにすることで、既存の国際秩序を受け入れて活動するのみだったと言われることの多い戦後日本外交が、実際にはその経済力ゆえに国際秩序の運営に関与していたことを明らかにする。
著者
金 美景
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

今まで雑誌論文計7件(単独)、図書計2件(単独)の出版や8件の学会発表(単独)がある。
著者
石川 直樹
出版者
広島市立大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2017-08-25

大規模アンテナアレイシステムにおいて、高い送信レートを維持したまま非同期検出を可能とする差動符号化方式について研究した。平成29年度の成果は計5本の論文として国際論文誌に投稿した。現在3本が採録判定となっており、すべて国際共著論文である。採録された3本の成果について概要を以下に記す。[成果1] 差動符号化方式一般の制限付き通信路容量を導出[成果2] 拡大体に基づく非直交差動空間変調を提案[成果3] 関連研究すべてを網羅するチュートリアル論文を発表[成果1]ではこれまで明らかにされてこなかった差動符号化方式の制限付き通信路容量を導出した。送信信号の位相に制限を加え、送信機の簡易化および検出器の高速化を実現した。[成果2]では申請者らが提案してきた差動空間変調を拡張し、複数系列の独立処理が可能となる軽量検出器を提案した。直前の受信信号を蓄えて送信シンボル検出に活用する点が特徴的である。[成果3]では同分野の研究者が申請者らの提案方式を理解し、シミュレーション結果を容易に再現可能とするチュートリアル論文を発表した。これは申請者の博士論文に基づくものであるが、本研究課題の現時点での成果を全て含めて紹介している。関連して、国内において招待講演の機会を賜われたので、空間変調の変遷と応用例について計2件の発表を行った。また、関連研究の査読を積極的に引き受け、IEEE Transactions on Communicationsの模範的査読者(exemplary reviewer)として認定された。
著者
樋脇 治
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

体内時計に関連する脳機能に対して電磁界が及ぼす影響について研究を行った。主に、パルス磁界を大脳皮質に照射したときの脳機能の特性について実験および理論的な検討を行った。神経細胞がパルス磁界により膜電位が変化するモデルを用いたシミュレーション解析結果に基づき、大脳皮質がパルス磁界に反応する特性について検討を行なった。大脳皮質には、主に信号の入出力の役割を担っている錐体細胞が大脳皮質表面に垂直に走行しているが、この錐体細胞のパルス磁界に対する反応特性について検討した。その結果、パルス磁界により二次的に誘導される電界の大脳皮質に垂直な成分が錐体細胞の膜電位変化に大きく関与しており、誘導電界の大脳皮質に垂直な成分の大きさの分布を算出することにより大脳皮質がパルス磁界により影響を受ける部位を検出できることを明らかにした。この結果に基づき、一次運動野を対象としてパルス磁界による刺激実験を行い、腕および手の誘発筋電図を指標としてパルス磁気が脳活動に与える影響を評価した。被験者の頭部右側にパルス磁気を8字型コイルにより照射し、左の腕および手から誘発筋電図を表面電極により計測した。その結果、一次運動野内において対象の筋を支配すると推定された部位における誘導電界の脳表面に対する垂直成分が最大となるようにパルス磁気の照射を行ったときに対象の筋に大きな振幅の筋電図が計測されることを確認した。これらの結果より、パルス磁気を脳に照射したとき、大脳皮質のそれぞれの部位における誘導電界の脳表面に対する垂直成分が大脳皮質の機能に影響を与える主な要因であることを見出した。今後、この知見を基にして視交叉上核を含む体内時計システムへのパルス磁界の影響について研究を継続して行なう予定である。
著者
高橋 賢
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ISDB-Tディジタルテレビ放送局は、地震や津波の緊急時に特別な信号を送信することにより、そのテレビ受信機の電源を自動的にオンにできることになっている。しかし、この機能には受信機でのビット誤りによる頻繁な警報(誤警報)を発する課題があった。本研究課題では、この自動起動信号をより確実にキャッチするための技術的方法を扱った。誤り訂正のためのパリティを自動起動信号の高信頼受信のためのみに用いる提案法は、従来法と比較して誤警報を1/1000以下にできることを明らかにした。
著者
椋木 雅之
出版者
広島市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本年度は,スポーツシーンに意味づけし,その結果を利用する技術を開発した.対象として,実際に放送された野球映像を用いた.野球における1シーンは1投球に対応する映像区間である.1投球区間に現れる映像ショットの種類,構成について検討したところ,・1投球から次の投球までの間が短いシーンは,見送りやファウルである・打球が飛んだ場合,その打球を追うカメラワークを含んだショットが現れる.・1シーンの中で,実際にプレイに関係するのは,投球開始から,打者や走者,投手をアップで写したショットまでの間であり,その後は,リプレイなど,ゲームの流れに無関係な映像が含まれる.などの特徴があることが分かった.これらの知識を導入するために,ショットの種類として,1.投球開始時に現れる「プレイ開始ショット」2.打球を追ってカメラワークが起こる「ボールを追うショット」3.打者,走者,投手をアップで撮影する「プレイヤショット」の3種類を取り上げ,自動的に識別する処理を実現した.これらのショット種別を利用して,3種類のダイジェスト生成を行った.1つ目は,3ショット以下で構成されるプレイを除去し,残りのショットのうち,1投球区間で「プレイ開始ショット」から最初に現れる「プレイヤショット」のみを集めたダイジェストである.このダイジェストは,試合の重要な流れを網羅しつつ,60分の映像を20分に短縮することができた.2つ目は,「ボールを追うショット」を含むプレイ区間を集めたもので,打球の飛んだプレイからなる5分間のダイジェストを生成した.3つ目は,「ボールを追うショット」を含むプレイが多く現れたイニングを抜き出したもので,実際に得点の入ったイニングからなる5分間のダイジェストを生成した.このように,ショットの種別を元にして,各種のダイジェストを生成することができた.