著者
井上 純一
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究課題最終年度のである今年度は,今まで3年間にわたり取り組んできた経路積分の方法を用いた市場履歴を含むマイノリティゲームのダイナミックスに関する解析を完成させた(プレプリント:Generating functional analysis of Minority Game with Inner Product Strategy Definitions, J.Inoue and A.C.C.Coolen).解析結果は簡単な計算機シミュレーション結果と一致した.ここでの結果は複数のトレーダーが過去まで遡る市場の履歴を情報源として共有し,自分の「売り」「買い」に関する意思決定に用いる場合,過去に履歴を遡って使うことで市場の揺らぎ(ボラティリティ)を小さくすることができるが,ボラテイリィティを最小にする履歴数が存在し,この臨界履歴数を越えると,より過去に遡った履歴を用いることによっては市場を安定化することはできないこと(ボラティリティをいくらでも小さくすることはできないこと)が明らかになった.さらに,当初の予定にあった[経済物理への展開]であるが,今年度は上記のゲーム理論に関する結果の他に,Sony bankに代表されるネットバンクの円ドル為替レートの変動メカニズムが自然界に現れるFirst Passage Timeの問題と等価であることを見出し,その統計的性質を調べるための解析手法を考案した.また,待ち行列の理論を用いることにより,顧客がネットワークにログインしてから,レートが変動するまでの平均待ち時間,及び,平均レート変動幅を評価する方法論を提示し,Sony bankの所有する実データの解析結果と一致した(Sony佐塚直也氏との共同研究).さらに,所得分布の冪則(いわゆるパレート則)をミクロなモデルから導出する試みとして,「壺モデル」と呼ばれるモデルを用いて,人々の間のお金の流れを数理モデル化し,それを解析することで,パレート則が出現する条件を詳細に議論することができた.これらの結果はいずれも今年6月にイタリアで開催される国際会議で発表予定である.プレプリント,掲載状況はhttp://chaosweb.complex.eng.hokudai.ac.jp/~J_inoue/で逐次報告していくので参照されたい.

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こんな研究ありました:ゲーム理論の統計力学による定式化と経済物理への展開(井上 純一) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/15740229
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