著者
立木 康介 TAJAN NICOLAS
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2015-04-24

本研究の目的は、身体的および心理学的な「傷」(traumaというギリシャ語はもともと身体的な傷を意味する)が文明の発展に及ぼした影響、もしくは果たした役割を明らかにすることである。歴史的文書、出版された文献、ならびにフィールド・インタビューを中心とする一次資料の調査を通じて、人文学、社会科学、生物科学、及びエンジニアリング(研究開発)といった諸分野のあいだの学際的対話を促進することが目指された。本研究の実施は、当初の計画からいくぶん変更されたものの、基本的な方向性や枠組みは一貫しており、多様な歴史的時代、および文化的地域を扱った。とはいえ、他の研究者たちの視点と向き合うことで、本研究の焦点の精度は上がり、今年度、本研究は五つのサブテーマに沿って組織し直され、そのそれぞれについて、文献学的、臨床的、および民族誌的方法を用いて、文献調査およびフィールド調査を行った。五つのサブテーマは、具体的には以下の通りである:1/ 西洋古代(ギリシャ・ローマ)における狂気とトラウマ:古代人はトラウマ的記憶を知っていたのか? 2/ フランス革命時の「大恐怖」から神経学臨床の誕生に至る、政治的暴力とトラウマ。3/ ショアーの記憶と世代横断的トラウマ。4/ 現代ヨーロッパにおける戦争トラウマのポリフォニー:フランス退役軍人のPTSDとテロ攻撃の犠牲者。5/ 社会的ひきこもりのトラウマ的特徴:日本のひきこもり患者とその家族の研究。これらのサブテーマは、外国人研究者が2019年の刊行を目指して目下準備している英文著書の五つの章をそれぞれ構成するだろう。プロジェクト全体では、三冊の著書を含む18本の成果が出版される予定である。

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