著者
田村 哲樹
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

まず、単著の研究書『熟議民主主義の困難――その乗り越え方の政治理論的考察』(ナカニシヤ出版、2017年5月)を刊行した。本書は、熟議システム概念の世界的な研究動向を踏まえつつ、その「システム」理解について、「入れ子型熟議システム」の概念の提起および自由民主主義と熟議システムとの関係の再検討を通じて、新たな問題提起を行うものである。また、海外の研究者2名との共著による論文「Deliberative Democracy in East Asia」を脱稿した。本論文も含むThe Oxford Handbook of Deliberative Democracyは、2018年度中に刊行予定である。また、9月には、ブラジル・ミネスジェライス連邦大学(UFMG)からの招待で熟議システムと自由民主主義の再検討に関する2つの報告・講演などを行った。この渡航費は招待者である同大学からの支出であるが、招待責任者の一人である同大学のリカルド・F・メンドンサ助教授との研究ネットワークは、本研究課題での活動を通じて深められたものであるため、ここに記しておきたい。さらに、熟議民主主義と政治概念の再検討に関する内容を含む、二冊の政治学教科書を、いずれも3名の研究者との共著で出版した。『ここから始める政治理論』(有斐閣ストゥディア、2017年)は、熟議民主主義を含む政治理論の現在の到達点を可能な限り平易な文体で伝えるものである。『政治学』(有斐閣、2017年)には、熟議民主主義を含む、「近代政治」の乗り越えをめぐる政治理論の研究動向や、経験的政治学と規範的政治学との関係についての説明も盛り込まれている。その他、熟議民主主義と政治の再検討に関するいくつかの学会報告や論文執筆を行った。特に日本比較政治学会の共通論題では、熟議システム論の再解釈を通じて分断社会への新たな政治理論的アプローチを提示した。

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