- 著者
-
高田 礼人
- 出版者
- 北海道大学
- 雑誌
- 基盤研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 2016-04-01
エボラウイルスは、ヒトまたはサルに急性で致死率の高い感染症(エボラ出血熱)をひき起こす病原体である。現在のところ、ワクチンや治療薬は実用化されていないが、2014年の西アフリカでの大流行と欧州や米国を含めた他国への拡散によって、予防・治療法開発が急務となった。中和抗体による受動免疫および既存の化合物が緊急的に用いられたが、実用化には大きな課題が残されている。(1)これまでに作製された治療用抗体は全てZaireウイルス特異的であり他の種のエボラウイルスには効果が無い。(2)投与された化合物の有効性がサルモデルで確認されていない事に加え、それらは細胞内で作用するウイルスポリメラーゼ阻害薬であるため、大量投与に伴う副作用が大きい。そこで、本研究では全てのエボラウイルス種に有効な抗体療法開発に繋がるマウスモノクローナル抗体の作出を試みると共にエボラウイルスの細胞侵入を阻害する新規化合物を探索し、エボラ出血熱治療薬の実用化を目指す。エボラウイルス(Zaire species)の表面糖蛋白質(GP)の遺伝子をゲノム内に組み込んだ増殖性の水疱性口炎ウイルスに感染させ回復したマウスに、エボラウイルス(Sudan species)のGPを持つウイルス様粒子を腹腔内投与してブーストする方法によって、昨年度得られた交差中和活性を示すモノクローナルIgG抗体2クローンおよびIgM抗体1クローンのエピトープ解析を行った。その結果、IgG抗体2クローンは既存の交差反応性中和抗体とエピトープを競合した。IgM抗体クローンは、異なるエピトープを認識すると予想されたため、IgG化し、エボラウイルス感染ハムスターモデルで受動免疫による効果を調べたが、治療効果は認められなかった。他方、fusion loopを認識する交差反応性抗体とGPとの結合構造の解析に着手し、Fabの結晶解析を終了し、GP-抗体複合体の電子顕微鏡による観察に成功した。