著者
鈴木 俊哉
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

第二年度に予定した作業内容はほぼ完了した。大徐本(岩崎本、平津館本、藤花シャ本原本、藤花シャ本中國書店影印本、陳昌治本、陳昌治本中華書局影印本、汲古閣通行本、汲古閣四次様本)・小徐本(述古堂本、汪啓淑本、祁シュン藻本)・段注本の対照表を作成し、これを漢字部品検索システムと連携させることで、前年度に作成した篆韻譜10巻本・5巻本対照表に岩崎本・述古堂本・祁シュン藻本を対応づける作業を効率化した。対照表の初版を完成させることができた。この対照表から、以下の知見が得られた。a) 旧説では10巻本には新修字はあっても新附字はないとされていたが、新附字が3字見つかった。b) 小徐本に有るが10巻本に無い字は118字、小徐本に無いが10巻本にある字は30字。したがって、脱落の規模は説文全体の1%程度である。篆韻譜10巻本の脱落がランダムに生じたとすると、400字近い新附字が殆ど無いことの説明は困難。c) 述古堂本・祁シュン藻本で違いがある場合、多くは10巻本と述古堂本が符合する。d) 現行の5巻本は二徐で違いがあるものを全て大徐に寄せているとは限らない。10巻本=小徐本のままで、大徐本と異なる場合もある。また、副次的な成果としてはデータベースの大徐本対照資料としての活用がある。ISO/IEC 10646では、台湾・中国から説文小篆を現代漢字とは別の用字系として追加する動きがあるが、どの版本が適切か、版本ごとに字形が違う場合の統合判断をどうするのか、また、選択した版本の避諱や誤字はどの程度クリーニングするのか、といった議論が不十分であった。これについては従来より指摘が続いたが、実際の対応表が無いため、議論が深まらなかった。本課題の検討材料として作成した大徐本対照資料を提出し、標準化の議論を深めることができた。

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鈴木俊哉「『説文繋傳』『篆韻譜』諸版対照データベースと大徐以前の小篆字形」https://t.co/9O0JsoC4hp で、国立公文書館蔵の平津館本『説文解字』や函海本『説文解字篆韻譜』を撮影し、IIIF対応公開されていることに気付いた。しかし、残念ながらvalidなIIIF manifestでなくビューワで閲覧できない。

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