著者
前原 由喜夫
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は,他者に対する思いやりや親切心に根差した動機づけ,すなわち利他的動機づけが,認知能力や学力,あるいは学習に対する動機づけに及ぼす影響について実証的に検討することである。そのために,視空間性ワーキングメモリ課題において,正解すると自分が利益をもらえる「利己的試行」と,正解すると他者に利益がもたらされる「利他的試行」を設けてパフォーマンスを比較した。さらに,その利益の大きさを「0円」(無利益),「10円」(低利益),または「100円」(高利益)と変化させることによって,利他的動機づけにもとづいた認知的コントロール能力の特徴を観察した。また,ADHD傾向が高いほど利他的動機づけの影響を大きく受けるという仮説のもと,大学生のADHD傾向の個人差を質問紙によって測定し,ワーキングメモリ課題成績との関連を検証した。その結果,不注意傾向の個人差は課題成績とほとんど関連が見られなかったが,多動性傾向が高い大学生ほど高利益の利他的試行において課題成績が高くなった。これは,ADHD的特性が動機づけの方向性次第で認知能力にポジティブな影響を与えることを示唆している。さらに,小学生や中学生でもADHD傾向の高い子が,利他的動機づけによって認知能力や学力が向上するかどうかを調べるための予備調査として,ADHD傾向,向社会的行動,学習に対する動機づけ,そして学業成績などの関連を自答式の質問紙によって調べたところ,全体的に不注意傾向や多動性傾向が高いほど向社会的行動が少ないという傾向が見られたが,共感性あるいは感情制御能力を統制すると,不注意傾向や多動性傾向と向社会的行動との負の関連は消失した。この結果は,子どものADHD傾向が単純に向社会的行動の少なさ,つまり利他的動機づけの低さと関連するのではなく,それらを媒介する他の性格特性あるいは認知特性が存在することを示唆している。

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ADHDあるとしてもほぼ不注意のみで多動はないからワイは役に立たんかった……… https://t.co/0Su4DRQQ6J
"自分自身の親切行動を振り返って記録することを2週間続けることは精神的健康に良い影響を及ぼしたが,学習に対するモチベーションには影響しないことが追認された。" https://t.co/ASjhcmP83t

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