著者
小川 園子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、攻撃行動の表出と、個体の不安情動性や社会的刺激に対する反応性のレベルとの関係、さらにストレス負荷による変容について、攻撃、不安情動性、社会認知、ストレス反応の制御への関与が示唆されている、エストロゲンレセプターベータ(ER-β)が果たす役割に焦点をあてて解析した。(1)エストロゲンによる不安関連行動の制御におけるER-βの役割を同定するために、性腺除去後に慢性的なエストロゲン処置を施された雄マウスの不安関連行動を明暗箱往来テストにより測定したところ、野生型(WT)マウスでは、エストロゲン処置により不安レベルの低減が見られたが、ER-βの遺伝子欠損マウス(βERKO)では、エストロゲンは全く効果がなかった。また、攻撃行動、情動行動への関与が指摘されているセロトニン関連遺伝子であるセロトニントランスポーター(SERT)のmRNAレベルを、ER-βが高濃度で存在する中脳背側縫線核で測定したところ、WTマウスではエストロゲン依存的なSERTの増加が見られたが、βERKOマウスでは全く変化がなかった。(2)雄マウスの攻撃行動は、生後5-6週間目の思春期到来の前後に発現し始め、その後性成熟とともに成体レベルの達することが知られている。我々は以前、βERKO雄マウスにおいて思春期前後の攻撃行動の増大すなわち攻撃性を抑制する脳内機構の異常を示唆する結果を報告した。本実験では、この様な攻撃性の異常を示すβERKOマウスにおいて、新生仔期での母親からの分離ストレスが、思春期での攻撃性のレベルや社会的探索行動テスト場面での不安行動に及ぼす影響について検討した。母親からの分離ストレスが負荷された雄マウスでは、5週令での攻撃行動の発現が遺伝子型を問わず減少していたが、βERKOマウスにおいて特に顕著な減少が見られた。従って、ストレス応答システムの発達にER-βが関与していることが示唆された。

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