著者
亀井 淳三
出版者
星薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1)真菌抽出成分で感作した動物を用いた慢性咳嗽モデルの作成真菌から抽出したアレルゲン物質をラットに感作した後に、咳感受性および気道過敏性の亢進の有無を確認する。真菌から抽出したアレルゲン物質により感作したモルモットにおいて、クエン酸およびカプサイシンにより誘発される咳嗽数は、非感作群における誘発咳嗽数に比べ有意に増加しており、咳感受性の亢進が認められた。一方、ヒスタミンにより誘発される気道収縮反応には、感作および非感作群の間に有意な差はなく、アレルゲン感作による気道過敏性の亢進は認められなかった。また、アレルゲン感作群で認められたクエン酸誘発咳嗽数の増加は、抗ヒスタミン薬により非感作群の咳嗽数のレベルにまで抑制された。これらのことから、真菌から抽出したアレルゲン物質により感作したモルモットにおける咳感受性の亢進はヒトにおけるアトピー咳嗽における咳感受性亢進に対応するもめと考えられる2)アナナダマイドによるTRPV1受容体を刺激し介したC線維興奮と一酸化窒素の関連マウスに高濃度(3mg/ml)のアナンダマイドを3分間吸入することにより誘発された咳嗽数(約15回程度)は、TRPV1受容体の選択的拮抗薬であるガプサゼピンにより有意に拮抗された。また、低濃度(0.3mg/ml)のアナンダマイドの吸入では溶媒である10%DMSO吸入時とほぼ同程度の咳嗽数(7回程度)が誘発されたがnitricoxide(NO)の前駆物質であるL-arginineを事前吸入することにより、低濃度(0.3mg/ml)のアナンダマイドの吸入による咳嗽数は有意に増加した。L-Arginineにより増加した低濃度(0.3mg/ml)アナンダマイド誘発咳嗽数はNOの合成阻害薬であるL-NAMEにより用量依存的に抑制された。Ovalbumineにより感作およびチャレンジにより気道炎症を引き起こしたマウスのカプサイシン誘発咳嗽数は非感作・非チャレンジ群マウスに比べ増加しており、肺胞洗浄液中のNO量も有意に増加していた。これらのことから、気道炎症により増加したNOがC線維終末でのトランスポーターを介したアナンダマイドの取込みを促進し、その取込まれたアナナダマイドがTRPV1受容体を刺激し、タキキニン類の遊離を促進することで、いわゆる咳の受容器の一つであるA・線維終末受容器のrapidlyadaptingreceptorの興奮性を亢進し、咳の感受性を増大させていることが考えられる。これらのメカニズムが気道炎症を伴う慢性咳嗽の発症機序の一因となっている可能性が強く示唆される。

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有効成分「メルピロール」を口からではなく胃内に直接投与の結果という事が重要である可能性が これまではNOは咳嗽を誘発する因子と捉えられてきたので https://t.co/tvIJBFS8WW https://t.co/fWK3mvonJD

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