著者
白水 俊介 岩崎 雄介 畦地 拓哉 安部 智哉 兼平 暖 相良 篤信 里 史明 湯本 哲郎 亀井 淳三
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-6, 2020-01-10 (Released:2021-01-11)
参考文献数
10

Saccharated ferric oxide is an iron preparation for intravenous injection obtained by colloidal particles of ferric hydroxide with sucrose. Although it is necessary to dilute saccharated ferric oxide with a 10-20% glucose injection solution according to the product labeling, it is often diluted with 5% glucose injection solution and/or saline in clinical practice. In the present study, we evaluated the stability of saccharated ferric oxide in various diluted solutions in terms of the abundance of free iron ions. The abundance ratio of free iron ions significantly increased with pH elevation of the diluted solution. Moreover, a marked decrease in the abundance ratio of free iron ions was observed in the sodium chloride solution exceeding the physiological concentration (0.9%). Furthermore, a statistical decrease in the abundance ratio of free iron ions was confirmed in the glucose solution compared to saline, and the degree of liberation of free iron ions in 5% glucose solution was the lowest among various concentrations of glucose solution. These results indicate the possibility that saccharated ferric oxide can be diluted by 5% glucose injection solution with minimal effects on its stability, although its dilution according to the product labeling is basically important.
著者
亀井 淳三
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.845-849, 2016 (Released:2016-09-02)
参考文献数
17

糖尿病マウスの扇桃体において内因性カンナビノイドである2-AGの産生が増加し、これがCB1受容体を刺激して不快情動反応が亢進する可能性が示されている。また、気道炎症など一酸化窒素(NO)の産生が増加した状態では、NOによるアナンダミド(AEA)のC線維終末部への取り込みが亢進し、AEAがTRPV1を活性化し、C線維終末よりタキキニン放出を増大させ咳感受性を亢進させていることも明らかになっている。さらなる研究の進展により、内因性カンナビノイドの機能を明らかにし、多くの疾患治療薬の開発につながることを期待したい。
著者
岩崎 雄介 奥村 真美 松本 仁見 安藤 千夏 亀井 淳三
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10.11, pp.573-581, 2021-10-05 (Released:2021-12-06)
参考文献数
38
被引用文献数
1

食品には,さまざまな機能性をもった化合物が多く含まれている.そのため,疾病の予防や症状の緩和に寄与する目的として,機能性を付与した食品が多く開発されている.化学物質や食品成分は,無毒性量(NOAEL)や許容一日摂取量(ADI)が設定され,さらに,医薬品は,開発段階において他の物質との相互作用についても詳しく調査されている.しかし,食品成分については,さまざまな成分が含まれているため,単体の安全性は確保されていても,相互作用については,すべてを検証し評価することは困難なものとなっている.そこで本稿では,食品に含まれる抗酸化物質に注目し,相互作用によって生じる活性酸素種及び活性窒素種について紹介する.
著者
亀井 淳三 林 隼輔 大澤 匡弘
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.131, no.6, pp.429-433, 2008 (Released:2008-06-13)
参考文献数
24
被引用文献数
3 4

咳は痰を喀出するための反射である.咳のメカニズムは明らかにされていないことが多い.そのためにピンポイントに作用する薬剤がないのが現状である.現在までに明らかにされているメカニズムは複雑である.咳が出る現象について概略を説明すると,気道に炎症があったり,また分泌物が溜まったりすると排出させようとする反射が起きる,それが咳と考えられる.咳反射の中枢への伝達経路はAδという有髄線維によると考えられている.臨床的に鎮咳薬は,咳の末梢あるいは中枢内経路のどの部位を遮断することによって咳を抑制するかが問題となる.例えば,コデインのような中枢作用性の薬剤は咳のメカニズムの中で共通経路を遮断することより効果は大きい.しかし,本来止めてはならない咳も止めてしまう危険性がある.また,中枢抑制の薬剤であるため咳以外の中枢作用,眠気なども低下させる可能性を持つ.これらを考慮すると,中枢性の薬剤で咳を遮断することは好ましくなく,より選択的な手段で鎮咳をもたらすべきである.日本において,鎮咳剤と称されているものは中枢性の鎮咳剤しかない.薬理学的には末梢性鎮咳剤と呼ばれるものがあってしかるべきであるが,実際には認可されていない.その大きな理由としては,咳のメカニズムが明確に示されていなかったことが大きな理由であろう.本稿ではこれらの問題を解決する基礎的知見となるべき咳の咳反射の求心路であるAδ線維の興奮性調節機序,特にC線維を介した咳感受性亢進機序について概説したい.
著者
亀井 淳三
出版者
星薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1)真菌抽出成分で感作した動物を用いた慢性咳嗽モデルの作成真菌から抽出したアレルゲン物質をラットに感作した後に、咳感受性および気道過敏性の亢進の有無を確認する。真菌から抽出したアレルゲン物質により感作したモルモットにおいて、クエン酸およびカプサイシンにより誘発される咳嗽数は、非感作群における誘発咳嗽数に比べ有意に増加しており、咳感受性の亢進が認められた。一方、ヒスタミンにより誘発される気道収縮反応には、感作および非感作群の間に有意な差はなく、アレルゲン感作による気道過敏性の亢進は認められなかった。また、アレルゲン感作群で認められたクエン酸誘発咳嗽数の増加は、抗ヒスタミン薬により非感作群の咳嗽数のレベルにまで抑制された。これらのことから、真菌から抽出したアレルゲン物質により感作したモルモットにおける咳感受性の亢進はヒトにおけるアトピー咳嗽における咳感受性亢進に対応するもめと考えられる2)アナナダマイドによるTRPV1受容体を刺激し介したC線維興奮と一酸化窒素の関連マウスに高濃度(3mg/ml)のアナンダマイドを3分間吸入することにより誘発された咳嗽数(約15回程度)は、TRPV1受容体の選択的拮抗薬であるガプサゼピンにより有意に拮抗された。また、低濃度(0.3mg/ml)のアナンダマイドの吸入では溶媒である10%DMSO吸入時とほぼ同程度の咳嗽数(7回程度)が誘発されたがnitricoxide(NO)の前駆物質であるL-arginineを事前吸入することにより、低濃度(0.3mg/ml)のアナンダマイドの吸入による咳嗽数は有意に増加した。L-Arginineにより増加した低濃度(0.3mg/ml)アナンダマイド誘発咳嗽数はNOの合成阻害薬であるL-NAMEにより用量依存的に抑制された。Ovalbumineにより感作およびチャレンジにより気道炎症を引き起こしたマウスのカプサイシン誘発咳嗽数は非感作・非チャレンジ群マウスに比べ増加しており、肺胞洗浄液中のNO量も有意に増加していた。これらのことから、気道炎症により増加したNOがC線維終末でのトランスポーターを介したアナンダマイドの取込みを促進し、その取込まれたアナナダマイドがTRPV1受容体を刺激し、タキキニン類の遊離を促進することで、いわゆる咳の受容器の一つであるA・線維終末受容器のrapidlyadaptingreceptorの興奮性を亢進し、咳の感受性を増大させていることが考えられる。これらのメカニズムが気道炎症を伴う慢性咳嗽の発症機序の一因となっている可能性が強く示唆される。
著者
斎藤 顕宜 森田 佳代 上野 慶一 八巻 芳夫 滝沢 登志雄 徳永 隆久 亀井 淳三
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農藝化學會誌 = Journal of the Agricultural Chemical Society of Japan (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.77, no.12, pp.1242-1245, 2003-12-01
参考文献数
17

Rosemary, plantago, and tea tree oil have been customarily used for the treatment of the common cold, but the detailed mechanisms of these antitussive effects are not well known. Thus, the aim of this study was to assess the antitussive properties of these herbs using a capsaicin-induced cough model in guinea pigs. Rosemary (10, 30μL/kg, <i>p.o.</i>), plantago (10, 30mg/kg, <i>p.o.</i>), and tea tree oil (10, 30μL/kg, <i>p.o.</i>) produced dose-dependent and significant antitussive effects. Methysergide (a serotonin receptor antagonist), but not naloxone (a opioid receptor antagonist), antagonize the antitussive effects of plantago and tea tree oil. On the other hand, neither methysergid nor naloxone had a significant effect on the antitussive effect of rosemary. Furthermore, γ-terpinene, terpinene-4-ol, cineole, and α-pinene, main components of tea tree oil and rosemary, significantly inhibited the number of capsaicin-induced coughs in guinea pigs. These results suggest that the antitussive effects of plantago and tea tree oil may depend on central mechanisms (modulation of serotonergic systems). On the other hand, the antitussive effects of rosemary may depend on peripheral mechanisms. Furthermore, it is suggested that γ-terpinene, terpinene-4-ol, cineole, and α-pinene may play an important role in the antitussive effects of tea tree oil and rosemary.