著者
伊藤 敬雄 大久保 善朗 須原 哲也
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本邦における自殺者は3万人を10年連続で超え、自殺率は先進国の中においても極めて高し状態で推移している。本研究において、睡眠の量的不足と不規則な睡眠習慣が、直接的もしくは間接的に自殺企図・自殺衝動のリスクを増大させる可能性があると報告した。まず、われわれは認知症高齢者での自殺研究で、画像解析から血管性認知症では基底核の多発性梗塞、アルツハイマー型認知症では左側前頭葉の萎縮が、自殺衝動性との関連性を伺わせる報告をした。次に、われわれは、救命救急センターに搬送された自殺企図者を対象に再自殺率の調査を行った。自殺企図の背景には、その時代を反映した心理的、環境的、社会的、文化的精神病理と家族内関係の問題が複雑に絡み合って存在している。自殺の背景因子把握と精神症状評価をしたうえで、長期に渡るケースマネジメントを行うことが自殺企図者に対して必要であることを報告した。また、気分障害圏、統合失調症圏、そして中高年者の自殺企図の特徴として、致死性の高い自殺企図手段を選択する場合が他群に比して多く認められた。うつ病と中高齢者における自殺企図と衝動性の関連において、脳器質的要因、とくに左側前側頭葉の萎縮と、そのほか、気分障害の既往歴、睡眠障害の既往、そしてアルコール乱用・依存者に強い関連性を指摘した。しかし、当初考えられていたセロトニン系の問題を検討したが、本年度の研究ではそれ以上の生物学的関連を見出すことは出来なかった。自殺率が一向に減少しない本邦において、今後、心理社会学的な自殺予防の取り組みとともに、中高齢者の症例数を重ねることで、自殺企図・自殺衝動と生物学的要因の関連について解明を図って行く必要性がある。

言及状況

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こんな研究ありました:中高年うつ病における自殺企図の生物学的要因に関する脳画像研究(伊藤 敬雄) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/17591235

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