著者
中村 健吾
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

2018年度は、本件とは別に私が研究代表者となり3年間にわたって進めてきた科研費による研究(「EUの多次元的な福祉レジーム改革とシティズンシップの変容に関する研究」、課題番号:16H05730)の最終年度にあたるため、年に2回の研究会を通じて共有された研究分担者たちによるEU加盟各国での福祉レジーム改革に関する調査結果をも参照しながら、「社会的に排除された人びと」の実態とその支援策の展開について知見の整理を進めた。その際、EUによる移民統合政策と共通庇護制度の分析を担当した私自身は、欧州委員会が2000年代に入ってから提唱した定住移民のためのcivic citizenshipという構想の行方、ならびにEU加盟各国において施行されている移民への「市民統合(civic integration)」政策の展開に着目して、2003年に採択されたEUの「家族再結合指令」および「長期居住者指令」が、(EU加盟国の国籍を有する市民のみが享受することのできる)EUシティズンシップとは異なる広義の欧州シティズンシップの形成にとって有する意味を考察した。上記の調査作業を整理するための理論的枠組みとして、フランスの政治哲学者であるJ.ランシエールのいう「政治」と「人権」の独特な概念、ならびにイギリスの政治学者であるE.アイシンが提唱する「遂行的シティズンシップ」の概念を援用し、得られた知見への分析を行なった。以上の研究の成果は、私が2019年9月に公刊した論文「EUは越境する人の権利をどこまで認めているか?」において発表した。また、上記の共同研究の成果をまとめた編著を出版する計画を研究分担者とともに立案した。

言及状況

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@nozomu1985 最近は科研費でこのあたりを研究されているようですね。https://t.co/Ou12wq0o0B

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