- 著者
-
前田 富士男
- 出版者
- 慶應義塾大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2018-04-01
本研究の根本的な課題は、「歴史記述(Histriographie)」の現代的可能性の追究にある。具体的には4つの研究課題を提起した。すなわち、アナクロニズム論、ハプティク(内触覚)問題、モニスムス的自然観、グノーシス的存在論である。2018年度は、10月から、5件の研究会・シンポジウム参加、講演を行った。年度当初より、そのための一次資料ならびに研究史の収集と把握を目指し、また2019年2月には、私費(助成費年度予算執行済みのため)にてドイツ・ミュンヘンの美術史中央研究所、またヴァイマルのゲーテ・シラー・アルヒーフほかで、資料調査を行った。ほかに年度当初から秋季にかけて、申請者の研究の今後のオープンな状況の基盤をなすドイツ語論文を作成した。上記5件の研究会・講演とは、アナクロニズムに関して1.「近代美術における<旅>の非・神話化」(慶應義塾大学アート・センター、2018年10月、慶大)、モニスムス的自然科学に関して2.「建築の時間と彫刻の物語――美術の歴史とゲーテ」(ゲーテ自然科学の集い、同11月、慶大)、および3.「ゲーテの鉱物学と C.G.カールスの地景画」(形の文化会、同11月、秋田大)、4.「大地(Land)の芸術学」(慶應義塾大学教養研究センター、2019年1月、慶大)、そしてグノーシスとプロテスタンティズムに関して5.「20世紀美術のモダニズムとエキュメニズム」(明治学院大学言語文化研究所、2018年12月、明学大)である。助成費のもとで、順調に多くの成果をあげることができた。とくに上記5のモダニズム美術とプロテスタンティズムに関する講演と論文(2019年3月)は、わが国ではほとんど着手されてこなかった問題圏の追究を開拓する貢献となった。