著者
中村 民雄
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

この研究はイギリスのEU脱退(Brexit)の前後を比較し、イギリスとEUの各法制が、越境的な広がりを持つ共通の問題についてグローバル次元でいかなる法を形成するかを観察することを前提に、グローバル行政法の基礎理論を考えようとする。ところが観察の前提であるBrexitが、イギリス国内政治の混乱により、本研究期間の2年度めに入っても実現しておらず、先行きも不透明である(2019年4月時点)。そこで研究の有意義な成果がでるように方法と焦点を再考する必要に迫られた。ゆえに初年度の環境法制の変化については、(1)現行の法制度が脱退協定により変化するものかどうかを検証すること。(2)イギリス独自の制度的工夫でグローバル行政法形成に直結しそうな展開を調査すること。(3)グローバル行政法の基礎理論の考察をEUが日本と締結した協定も手がかりに進めること(これはBrexit後のイギリスがEUと締結する協定のモデルとなりうる)。以上の3点に絞って研究を進めた。(1)については、EUの環境法制度のうち、イギリスがもっとも実施において困難を抱えてきた大気汚染防止の項目について、脱退後は独自法制度で取り組むことが示唆されていることを把握した。(2)については、全国規模ではないが、地方分権後のウェールズにおいて議会が、将来世代の利益を代弁して現在の世代の政策形成において考慮させる「将来世代オンブズマン(Future Generations Ombudsman)」の制度を、ウェールズ議会の制定法により創設したことに焦点をあて、2019年3月に当該オンブズマン事務局において法令やネット情報等では得られない具体的な活動の成果や活動上の困難や留意点、そして世界の類似の制度との協力の有無や協力の成果についてインタビュー調査をした。(3)については、EU-Japan Forumにおいて研究発表をした。

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