- 著者
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佐藤 俊樹
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2018-04-01
本年度は特に、(1)本研究プロジェクトの学術的成果をふまえて、社会学の従来の方法論と統計的因果推論などの最新の分析手法との連続性と非連続性を明確にして、因果推論の方法を社会学のなかに適切に位置づける、(2)それらをふまえて「量対質」の対立をこえた安定的な因果分析の枠組みを構築する、の二つを主な課題にして研究を進めた。特に研究成果を狭い範囲の専門家だけでなく、隣接諸分野の研究者や大学院生や学生なども読者層となる媒体に成果の一部や、それらをふまえたより実践的な考察を掲載することができ、より一般的な形での成果の発信・還元を進めることができた。佐藤俊樹「コトバの知と数量の知 百年のウロボロス」(『現代思想』20年9月号)では、マックス・ウェーバーの比較宗教社会学をとりあげて、それが適合的因果の方法論に厳密にしたがっており、それゆえ彼の社会学的研究全体もこの方法論を軸に体系的に整理できることを述べた。佐藤俊樹「知識と社会の過去と美来」(『図書』860,862,864号)では、新型コロナ感染症のパンデミックへの対応を主な事例にして、現代の社会と社会科学がどのような状況にあるのかを素描した。今回のパンデミックは大規模感染症がもつ確率的な事象という面に対して、社会が反省的な対応を迫られた最初の事例である。偽陽性と偽陰性が第二種の過誤と第一種の過誤の問題であるように、「知る」ということは科学的には確率的な推論であるが、社会の側ではそれを受け入れられない。そのずれは社会科学の内部にもその成立以来、ずっとありつづけおり、ウェーバーの方法論はそのずれへの反省的対処の最初の試みの一つにあたることを示した。