著者
中村 乙水
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

外温性魚類は外界の水温を使って体温を調節しているが、冷水中で失った体温を回復する際には熱の交換が活発になるなど、なんらかの生理的な調節によって外界との熱の交換を調節していることが示唆されている。仮説としては、「鰓が熱交換器として働いており、血流や海水の流量を変化させることで熱の交換を調節している」ことが考えられる。そこで、生きた魚に体温調節が必要な温度環境を経験させ、動物搭載型記録計を用いて魚の体温、心拍といった生理情報を計測する飼育実験を行った。今年度は、コバンザメ類の一種であるナガコバンを用いて飼育実験を行った。コバンザメ類は宿主である大型魚類によって低水温の深海まで連れて行かれると考えられるため、低水温化で熱を失わないような調節を行っている可能性を考慮して実験対象とした。ナガコバンに体温と心拍数を記録するデータロガーを装着し、飼育水温(25℃)と低水温環境(15℃、10℃、5℃)を交互に経験させ、体温と心拍数および鰓蓋の運動を観察によって記録した。ナガコバンの心拍数は定常状態で60bpmだったが、低水温環境では5bpm以下、その後の体温回復期には100bpm以上まで上昇した。低水温環境下では鰓蓋の運動も停止することがあった。体温変化と水温から熱収支モデルを用いて熱交換係数の変動を推定したところ、熱交換係数と心拍数には相関が見られたが、冷える時と温まる時で1.3倍程度の違いしか見られなかった。大型のマンボウやジンベエザメでは3~7倍の違いが見られたことから、小型の魚では熱の損失を防ぐ能力が高くないことが示唆された。来年度以降は他の魚種でも同様の実験を行うとともに、野外での心拍数の計測も試みる予定である。

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