- 著者
-
平野 牧人
- 出版者
- 奈良県立医科大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2007
本研究の目的は種々の神経変性疾患原因蛋白の核内輸送に関して、運動ニューロン病様Triple A症候群(AAAS)の原因である核膜孔蛋白アラジンに依存性であるかを検討し、本疾患で障害を受けやすい古典的な核局在シグナル(NLS)以外の輸送シグナル同定と輸送機序の解明である。本研究により小脳失調原因蛋白アプラタキシンのみAAASの輸送障害を受け、他の原因蛋白は障害を受けないことが判明した。また、核内輸送障害を受けないDNA修復蛋白であるXRCC1において、輸送障害を改善するために重要なのは、古典的NLS(239-266残基)の下流267-276残基であることを同定した。この部位を含む新規NLS(239-276残基)38アミノ酸配列をminimum essential sequence of stretched nuclear localization signal(mstNLS)と名付けた。mstNLSを融合すると、輸送障害を受けていた小脳失調原因蛋白アプラタキシンはAAAS患者細胞の核内に効率よく輸送された。さらに、mstNLSは酸化ストレス下の正常細胞においても、強力な核局在シグナルとなることが証明された。以上から本研究成果は、AAASの病態機序改善のみならず、核内輸送研究に貢献しうると考えられる。