著者
勝野 眞吾 松浦 直己
出版者
兵庫教育大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究では、少年院在院者に対して、いくつかの精神医学的尺度および心理学的質問紙を使用した調査を実施した。世界的にも女子における深刻な非行化群の研究例は少ない。本研究の目的は、女子少年院在院生を対象として、自尊感情や攻撃性、児童期のAD/HD徴候及び逆境的児童期体験における特性や明らかにすることである。またそれぞれの因子の関係性を解析し因果モデルを構築することである。その際、年齢と性別をマッチングさせた対照群を設定した。対象群はA女子少年院在院生41名で平均年齢は16.9(標準偏差1.7)歳。2005年12月から2007年5月までに入院した全少年を対象とした。両群にRosemberg版自尊感情尺度、日本版攻撃性質問紙、ACE(Adverse Childhood Experiences)質問紙、AD/HD-YSR(Attention Deficit/Hyperactivity Disorder-Youth Self Report)を実施した。対象群のみWISC-IIIを実施した。自尊感情尺度の結果、対象群の自尊感情は有意に低かった一方、攻撃性に有意差は認められなかった。ACE質問紙の結果両群には著明な差が検出され、対象群の深刻度が明らかとなった。AD/HD-YSRの結果、対象群は学童期から不注意や多動衝動性等の行動の問題が顕著であることが示唆された。またWISC-IIIの結果、対象群のFIQの平均値は79.4(SD=11.1)点であり、認知面の遅れが示唆された。相関分析では、攻撃性得点と自尊感情には有意な負の関係が認められ、攻撃性とACE score及びAD/HD-YSR得点には有意な正の相関が検出された。すなわちこれらの因子が攻撃性に影響を与えていることが示唆された。このような傾向は青年期のみならず、成人期以降も対象者(少年院在院者)に深刻な影響を与えると思われた。

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