著者
阿部 徹也
出版者
兵庫医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

口腔・顔面領域は皮膚領域と、粘膜領域とが入り組み、ラットへのホルマリンの注入刺激は顔面皮膚領域の方が口腔内の粘膜領域より多くの疼痛関連行動を起こす。その行動は脳内抑制性伝達物質であるGABA受容体を通して制御され、その制御効果も顔面の疼痛に対する方が大きい。口腔粘膜領域はC線維が顔面皮膚領域より少なく、そのことが中枢の制御機構にも差を生じさせている。ペプチド性のC線維に含まれるサブスタンスP(SP)の受容体であるニューロキニン1(NK-1)は三叉神経尾側亜核(Vc)のI層とIII層に分布し、侵害受容に関わっている。私たちは細胞質内に入って毒性を発揮するライボソーム非活性化毒素であるサポリンをSPに結合させたSP-サポリン(SP-Sap)を延髄の後角(Vc;三叉神経尾側亜核)に作用させ、I層やIII層に存在するSPの受容体であるニューロキニン1受容体(NK1)を持つニューロンを削除することに成功した。SP-Sapを小脳-延髄槽(大槽)に投与して2~4週間後のラットでは、VcのI層とIII層のNK-1受容体免疫陽性ニューロンの数が減少した。SP-Sap処置ラットではホルマリン誘導侵害受容反応Vcがコントロールラットに比べ減少した。コントロールラットではホルマリン注射の前にビククリンを全身投与すると侵害受容反応は減少するが、SP-Sap処置ラットでは逆に増加した。すなわちNK-1を持つニューロンが侵害刺激の受容だけでなく、上位脳のGABA_A受容体を介した制御系に関与することを示した。

言及状況

Twitter (2 users, 3 posts, 0 favorites)

こんな研究ありました:三叉神経損傷動物を用いた三叉神経痛の発症機構の解明(阿部 徹也) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/20791562
こんな研究ありました:三叉神経損傷動物を用いた三叉神経痛の発症機構の解明(阿部 徹也) http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/20791562

収集済み URL リスト