著者
余田 佳子 島 正之 大谷 成人
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

空気清浄機の使用による一般家屋内の大気汚染物質濃度の低減と、それによる呼吸器系への影響の改善効果を評価するために健常者32名を対象にクロスオーバー介入研究を行った。その結果家屋内の微小粒子状物質(PM2.5)濃度は、本物の空気清浄機使用では偽物に比べて約11%低減したがその差は有意ではなかった(p=0.08)。同居のいない世帯で空気清浄機によりPM2.5の有意な低減効果が見られた。しかし、健康影響については明らかな効果はみられなかった。一方、屋内粗大粒子(PM10-2.5)濃度の増加により1秒量の有意な低下が見られた。同様に屋内オゾン濃度の増加により最大呼気中間流量の有意な低下が見られた。
著者
赤谷 昭子 澤井 英明 鍔本 浩志
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

「背景」成熟精子表面には、雄性生殖臓器特異抗原CD52(mrtCD52)が存在し、臨床的に精子抗体が原因で起こる不妊症は、このCD52の糖鎖が責任抗原であることがあきらかにされている。本課題では、動物実験によりmrtCD52抗原の免疫が同種メスに抗体産生を誘導することができるか、またこれを避妊ワクチンに応用することができるかを検討した。「方法」マウス雄性生殖組織(輸精管)より、mrtCD52を精製した。♂および♀マウスに完全フロインドアジュバントとともに皮下投与(全身免疫)した。また粘膜免疫として、コレラトキシンBをアジュバントとして経鼻投与した。抗体の産生はELISA、western blot法、蛍光抗体法により評価した。抗体の生物作用として、精子不動化試験、in vitro受精阻害実験、交配実験を行った。「結果」♂♀マウスの全身免疫により、mrtCD52に反応する抗体が産生された。また、経鼻投与によっても血中に抗体が検出された。いずれの抗体もCD52のペプチド部分には反応せず、糖部分が免疫原性を持つことがわかった。またこれらの抗体は、補体の存在下でマウス精子を不動化した。In vitro受精および免疫♀マウスの妊娠は阻害しなかった。「結論」mrtCD52には同種あるいは自己抗体を産生する糖鎖抗原が存在することが明らかになった。これによってヒト不妊症で報告されていた精子に対する同種抗体の産生を、マウスで実証した。免疫動物の妊娠阻害には至らなかったが、抗体が不動化作用を持つことから、避妊ワクチンの開発には、雌性生殖器器官に効果的に発現する抗体、分泌型IgAの産生を高めることが今後重要と考えられる
著者
名波 正義
出版者
兵庫医科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

糖尿病性腎症(DN)の尿細管間質病変は腎予後と深く関連している。本研究ではDNの尿細管障害過程における細胞内鉄代謝の関与を検討した。2型DNモデルマウス(db/db)の近位尿細管において、鉄取り込み蛋白であるトランスフェリン受容体1(TfR1)、二価金属イオン輸送体1(DMT1)の発現亢進、ミトコンドリアにおける鉄シャペロン蛋白であるフラタキシンの発現抑制およびマンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)活性の低下が認められた。以上の結果から、DNでの近位尿細管における細胞内鉄輸送異常とミトコンドリアでの鉄代謝および酸化ストレス制御障害が尿細管障害過程に関与している可能性が示唆された。
著者
越久 仁敬 岡田 泰昌 平田 豊 池谷 裕二
出版者
兵庫医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

吸息活動は、延髄内のpre-Botzingercomplex(preBotC)という場所で起こる。従来の説では、呼吸リズムはpreBotCの神経細胞(ニューロン)が作り出しており、脳のもう一つの主要な構成細胞であるグリア細胞は、ニューロン周囲の細胞外環境を維持する程度の役割しか演じていないと考えられていた。本研究において、我々は、吸息時に活動するニューロンに先行して活動を開始するアストロサイト(グリア細胞の一種)を発見した。ニューロン活動のみを抑えるフグ毒のテトロドトキシンを投与すると、ニューロン活動および呼吸神経出力は消失したが、これらのアストロサイトの周期的な自発活動は残った。さらに、光を照射すると細胞を活性化させるイオンチャネルであるチャネルロドプシン2を、アストロサイトにのみ発現させた遺伝子改変マウスを用い、preBotC領域のアストロサイトを光照射で興奮させると、吸息性ニューロンの活動を惹起させることができた。これらの結果は、アストロサイトがpreBotC領域において呼吸リズム形成に積極的に関与していることを示唆している。
著者
池田 啓子 川上 潔 佐竹 伸一郎
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

Naポンプα2サブユニットは脳(アストロサイトと海馬の錐体細胞)に高発現し,家族性片麻痺性偏頭痛2型(FHM2)の原因遺伝子である。常染色体優性遺伝形式のFMH2は痙攣や小脳症状を合併する。研究代表者はその病態解明と新しい治療法・治療薬の開発を目指し,α2サブユニット遺伝子ノックアウトマウスを用いて解剖・組織学的解析,電気生理学的解析を行った。ノックアウトマウスでは皮質拡延性抑制 (CSD)の誘発閾値が低い傾向が観察された。また,ヒトで見つかる遺伝子変異をマウス相同部位に導入したトランスジェニックマウス3種類の作成と,疾患モデルマウスとしてのスクリーニングを行い,今後の研究の基盤作りを試みた。
著者
飯島 尋子 西口 修平 有井 滋樹 市野瀬 志津子 田中 博 佐藤 哲二 西上 隆之
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

慢性肝炎および非アルコール性脂肪性肝炎の超音波機能診断法として、非造影、造影による診断法を検討した。VTTQによる慢性肝炎の診断法を確立した。Sonazoidを用いた造影法によるNASH診断法を検討した。またNASHラットモデルを用いSonazoidを投与し生体顕微鏡による検討では、Kupffer細胞へのSonazoidの貪食は経時変化によっても増加せず、貪食能力の低下が原因と考えられた。VTTQによるNASH診断については早期ステージでの診断に問題が残り今後の検討課題となった。
著者
阿部 徹也
出版者
兵庫医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

口腔・顔面領域は皮膚領域と、粘膜領域とが入り組み、ラットへのホルマリンの注入刺激は顔面皮膚領域の方が口腔内の粘膜領域より多くの疼痛関連行動を起こす。その行動は脳内抑制性伝達物質であるGABA受容体を通して制御され、その制御効果も顔面の疼痛に対する方が大きい。口腔粘膜領域はC線維が顔面皮膚領域より少なく、そのことが中枢の制御機構にも差を生じさせている。ペプチド性のC線維に含まれるサブスタンスP(SP)の受容体であるニューロキニン1(NK-1)は三叉神経尾側亜核(Vc)のI層とIII層に分布し、侵害受容に関わっている。私たちは細胞質内に入って毒性を発揮するライボソーム非活性化毒素であるサポリンをSPに結合させたSP-サポリン(SP-Sap)を延髄の後角(Vc;三叉神経尾側亜核)に作用させ、I層やIII層に存在するSPの受容体であるニューロキニン1受容体(NK1)を持つニューロンを削除することに成功した。SP-Sapを小脳-延髄槽(大槽)に投与して2~4週間後のラットでは、VcのI層とIII層のNK-1受容体免疫陽性ニューロンの数が減少した。SP-Sap処置ラットではホルマリン誘導侵害受容反応Vcがコントロールラットに比べ減少した。コントロールラットではホルマリン注射の前にビククリンを全身投与すると侵害受容反応は減少するが、SP-Sap処置ラットでは逆に増加した。すなわちNK-1を持つニューロンが侵害刺激の受容だけでなく、上位脳のGABA_A受容体を介した制御系に関与することを示した。
著者
五味 文 岡留 剛 荒木 敬士 福山 尚 角所 考 井村 誠孝 小椋 有貴
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)は元来予後良好な疾患とされていたが、病状が遷延し、重篤な視力低下に至ることもある。さらに近年ではCSCと加齢黄斑変性との関連が示唆されてきており、実際一部のCSC例は滲出型加齢黄斑変性に移行することがわかってきている。本研究の目的は、CSC症例における遷延・加齢黄斑変性移行例のリスク因子を見出し、早期の介入を促すことで更なる病状進展、視力低下を抑制することである。具体的には、①眼科画像検査、②身的・外的ストレス評価、③視覚異常のシミュレーション、の3つのアプローチで、ハイリスクCSC症例の早期発見を試みる。
著者
兼松 明弘
出版者
兵庫医科大学
雑誌
産学が連携した研究開発成果の展開 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) トライアウト トライアウト
巻号頁・発行日
2020

尿流率測定装置とは秒あたりの排尿量を記録する装置で、排尿障害を来す疾患で汎用される。しかし、従来の尿流率測定装置はトイレにて立位または座位で排尿することが前提であった。我々はオムツに尿がしみこむ速度を、オムツに編み込んだ電極間のインピーダンス変化として検出することで尿流率を高精度に測定できるシステムを作成した。本課題はこのシステムの社会実装を目指して、安全性・利便性・採算性・スケーラビリティについて改良を行う。これを用い、臥位での排尿の実相をボランティアを対象として明らかとし、先天性疾患を有する乳幼児の排尿管理での有用性を検討する。将来的に、寝たきり高齢者のオムツ外しにも貢献すると期待される。
著者
菱田 繁 谷口 忠昭
出版者
兵庫医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

ラットの自発的にアルコール (以下 「ア」 と記す) を選択し得る装置を用いて、ラットの 「ア」 嗜好性を調べ、その遺伝的背景を調べるための基礎的な実験を行った。ラットの 「ア」 嗜好性を調べるために使用した装置は、スキナーボックスを、Dne-lever,two-liquid方式に改良したものである。すなわし、ラットがスキナーボックス内で壁面のレバーを押すと水または、10% 「ア」 水溶液が交互に、壁面中央のノズルから出て来るように設計してある。この装置にはNEC社製パーソナルコンピューター (9800uM) を用いて、簡単に操作、制覇でき、かつ、データー処理が行なえるようにソフトウェアを組込んである。(1) ラットの系統別にみた 「ア」 嗜好性の差を調べるために、Wister系ラット、Long-Evans系ラット、Levis系ラットならびにFiscker系ラットを選び、各々のラットにおける 「ア」 嗜好性を調べ、各系統別に高い 「ア」 嗜好性を示すラットの出現頻度を求めた。その結果、Lewis系およびWister系ラットで 「ア」 嗜好性ラットの出現頻度が他の系統に比べて高く、Long-Evans系ラットで最もその出現頻度が低かった。(2) 同一系統内で、より高い 「ア」 嗜好性を有する雄ラットと雌ラットを選び、それらを近親交配させると、その子供に高い 「ア」 嗜好性を持つラットが高頻度で発生することがわかった。(3) また、ラットをAlcohol diet ( 「ア」 含有の液体飼料) で長期間飼育すると、そのラットの 「ア」 嗜好性が上昇することもわかった。以上の基礎的なデーターを基にして、今後はラット肝の 「ア」 ならびにアセトアルデヒド脱水素酵素の多形等からラットの 「ア」 嗜好性の遺伝的背景を追求して行きたい。
著者
松山 知弘 磯 博行 塩坂 貞夫
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

ニューロプシンの海馬機能における役割を検討する目的でニューロプシンノックアウト(KO)マウスの学習・記憶障害を行動学的に検討した.KOマウスはwildのlittermateに比較し,オープンフィールドテストではより高い活動性を示し,Auditory Startle Reflexでは驚愕反射の増大と延長を,そして水迷路テストでは反応潜時の明らかな延長を認めた.一方,放射状迷路テストと受動的回避学習テストでは両群間で有意差は認められなかった(Obata K,et al.4th World Stroke Congress,Melbourne,Australia,2000).KOマウス脳は病理組織学的にはwildのそれと比較し、シナプスに形態異常のあることが判明した(Hirata A,et al.Mol Cell Neurosci,in press,2001).さらにニューロプシンは海馬LTPに重要な役割を果たしていることが明かとなった(Komai S,et al.Eur J Neurosci 12:1479-1486,2000).従ってニューロプシン欠損は高次脳機能のうち情動障害と空間認知機能障害をはじめとする学習・記憶障害をきたすことが明らかとなった.マウスの一過性前脳虚血モデルを用い,脳虚血負荷後の海馬機能を行動学的に検討した.虚血負荷後CA1錐体細胞死のみられたマウスではすべての行動テストに異常を認めた.一方,細胞死のみられない動物ではオープンフィールドテストや回避学習テストではsham群に比し差異を認めなかったが,水迷路では反応潜時の明らかな延長を認めた.放射状迷路学習での誤反応数は細胞死の有無にかかわらず虚血群とsham群間に差異は認めなかったが,虚血群では空間配置の確認作業や遂行の順序だての欠落を示すと考えられる行動異常,痴呆症にみられる徘徊行動を説明する現象を認めた.従って,脳虚血は明らかな海馬神経障害の有無にかかわらず空間認知機能障害をはじめとする学習・記憶障害をきたすことが明らかとなった(Matsuyama T,et al.J Cereb Blood Flow Metab 17(Suppl 1):S638,1997).以上の所見より,脳虚血に伴う海馬ニューロプシンの低下は学習・記憶障害を引き起こす可能性のあることが明らかとなった.これらの結果は今後の神経行動科学研究に有用であると思われる.
著者
吉原 大作 藤原 範子 崎山 晴彦 江口 裕伸 鈴木 敬一郎
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、「フェロトーシス(Ferroptosis、鉄依存的細胞死)の分子機構」を明らかにして、加齢による生体機能の低下(=老化)に鉄が果たす役割を解明することである。 フェロトーシスは、鉄キレート剤によって阻害されることから、鉄依存的な「制御された細胞死(Regulated cell death:RCD)」であると定義されている。RCDは、生体恒常性を維持する上で非常に重要な機構で、老化との関連も深い。研究代表者らは、加齢に伴う鉄代謝異常が老化を促進する背景には、フェロトーシスが関与しているのではないかと考えている。しかしながら、どのような鉄代謝異常がフェロトーシスを引き起こすのかということは未だに明らかになっていない。これまでに、研究代表者らは、フェロトーシスが誘導される際に、細胞内の鉄量が増加していること、鉄代謝調節タンパク質IRP1が顕著に減少していることを見出している。 平成29年度には、培養細胞を用いて、フェロトーシスの誘導機構に関する検討を行った。その結果、これまでにフェロトーシスの誘導剤として知られていたErastin以外にも、酸化ストレスを誘導する薬剤によってフェロトーシスに類似した細胞死が誘導されることを見出した。また、二価鉄イオン特異的な蛍光プローブであるRhoNox-1などを用いて、Erastinや酸化ストレスによって細胞死が誘導される際の鉄イオン動態を解析した。
著者
野口 侑記
出版者
兵庫医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

Bispecific T-cell Engager(BiTE)を用いた新しい評価系で腫瘍内微小環境を模式的に再現し、それを用いて約1300種類の既存薬からリンパ球賦活効果のある薬剤のスクリーニングを行ったところ、テトラサイクリン系抗菌薬デメクロサイクリン(DMC)が検出された。DMCはリンパ球の分裂を促す量的効果と、抗腫瘍効果を示すサイトカインの産生を増強する質的効果を共に持っていた。さらにマウスモデルでin vivoでの効果も検証したところ、PD-L1阻害薬にDMCに追加したグループで有意に腫瘍増大が抑制されることが示され、末梢血中に腫瘍特異的リンパ球の割合も有意に上昇していた。
著者
森田 毅 中嶋 一彦 肥塚 浩昌 下山 孝 田村 俊秀
出版者
兵庫医科大学
雑誌
兵庫医科大学医学会雑誌 (ISSN:03857638)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.13-27, 2003-04-25

Helicobacter pylori (H. pylori)の主なvirulence factorとしてcag PAI (cag pathogenicity island)が挙げられている.cagPAI は作用物質であるCagA蛋白質と,それを感染宿主に注入するtypeIVsecretion systemから成る.後者を形成する遺伝子群の一つ,cagBはcagAとそれぞれのプロモーターが相接してcagA-cagB間隙(cagA/B)を形成しており,CagA蛋白質とそのsecretion systemの相互関係を,本菌の疾患との関連において知り得るに適していると考えた. そこでcagA/Bを兵庫医大臨床分離株36株,欧米登録株2株とのデーターベース上で全塩基配列が引用される26695株を基準として比較検討した.その結果次のことが判明した.(1) H. pyloriのcagA/B約400bpの"long type"と約250bpの"short type"に大別され,本邦分離株はほとんど"short type"である.またいくつかの塩基欠損の部位により11typeにわけられる.(2) cagA/B間にcagAの転写開始点は2ケ所,cagBの転写開始点は1ケ所見出された.また-10コンセンサス部位は認められたものの,-35は明らかでなかった.(3) β-galactosidase (lacZ)によるプロモーターアッセイでは,cagA, cagB菌株間に顕著な差異が認められた.(4) cagA, cagB変異株,野生株いずれの株においてもcag PAIの他の遺伝子(cagC, cagD)を発現しcagAまたはcagB欠損の影響はみられなかった.cagA/Bプロモーター領域は全cagPAIの一部ではあるが,株間の構造,活性に大きな差があり,cagPAIの多様性を示唆するものである.また,さまざまなH. pyloriに由来される疾患とcagA/Bの多様性の間に優位の関連性は認めがたく,cagPAIは宿主とあいまって,病原性よりも病原修飾因子として論議すべきであると推察する.
著者
後藤 章暢
出版者
兵庫医科大学
雑誌
兵庫医科大学医学会雑誌 (ISSN:03857638)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.45-48, 2007-12

21世紀の新しい治療法として期待を集めてきた遺伝子治療法は,難治性疾患の夢の治療法という考え方から,より現実的な治療技術の一つとして発展しつつある.従来の治療法で効果のなかつた疾患に対し,根治はできないまでも,ある程度の治療効果をあげたり,従来の治療法と同等の治療効果をより少ない副作用で実現したりすることは十分可能であると考えられる.泌尿器科癌における遺伝子治療臨床研究は欧米を中心に行われており,米国では泌尿器科癌に対し,現在90以上の遺伝子治療臨床研究プロトコールが進行しているが,本邦では3つの遺伝子治療臨床研究にすぎない.本稿では,私のグループがこれまでに行ってきた,前立腺癌を対象とした遺伝子治療臨床研究の取り組みについて解説した.
著者
辻 芳之 岡村 春樹 玉置 知子 長田 久美子
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

マイコプラズマ属のUreaplasma urealyticum(Ur)感染の臨床的意義:妊婦の膣分泌物を培養し、Ur感染に関して、正期産例のUr陽性例は30.0%(30/100)、早産例のUr陽性例は51.1%(23/45)で早産症例に有意(p<0.02)に高かった。また、Urと他の菌(GBS, Gardnerella vaginalis, Candida, E.coli等)との混合感染症例は、無感染群に比べて早産のリスクが7倍高かった。抗ureaplasma urease monoclonal抗体を用いた蛍光免疫染色:Ur株からこの菌が産生するureaseに対する抗体をhybridomaによって作成した。この抗ureaplasma urease monoclonal抗体を用いてUr感染した膣分泌物は陽性に染色された。Urのlipoprotein(LP)が単球細胞に及ぼす影響:Urの菌体からLPを抽出した。TLR-2,-4の存在が知られているヒト単球系細胞株THP-1細胞に添加しTLRのリアルタイムPCRを行ったところ、TLR-2の発現増強が認められた。Ur LPで刺激したTHP-1細胞のapoptosis, necrosisの誘導をflow cytometerで確認したところ、apoptosis, necrosisともに誘導された。さらにELISA法にて、早産に関わる炎症性サイトカインIL-1β,IL-6,IL-8,TNF-αの測定を行ったところ、Ur LPで刺激されたTHP-1細胞は時間経過とともにIL-8の産生が増加したことが確認されたが,その他の炎症性サイトカイン誘導は無かった。また、IL-18は測定感度以下であった。
著者
大江 正之
出版者
兵庫医科大学
巻号頁・発行日
2004

平成17年6月16日学位取消
著者
宮本 正喜 平松 治彦 仲野 俊成 仲野 俊成
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

今回、セマンティックウェブ技術を応用して、保有するデータベース技術を駆使して医師の養成等に利用できる学習システムの構築を行った。上部内視鏡の診断所見における語彙と語彙の組み合わせの強度により、「撮影方法」「基本部位」「基本所見」「診断」の関連についてオントロジ-技術を使ったデ-タベ-スの構築を整えた。症例画像デ-タベ-スの基本を作り、オントロジ-デ-タベ-スに組みこみ、問題作成や答え合わせが可能となる学習システムを構築した。この3年間で、何名かのIT技術者や医学生、研修医にテストユ-ザ-として使用をしてもらい実証実験を行った。その結果いくつかの問題点はあるものの、比較的良好な評価が得られた。
著者
堀内 功 澤井 英明 小森 慎二 赤谷 昭子 香山 浩二
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

TNSALP遺伝子のゲノムDNAをPCR法にて増幅した。ゲノム遺伝子は12エクソンに分かれているため、PCR法に用いるプライマーはそれぞれのエクソンについて合成する必要がある。しかも細胞1個にはTNSALP遺伝子は1対(2個)しか含まれていないため、これを遺伝子増幅するためには増幅対象領域についてPCR反応を繰り返して2度行ういわゆるnested PCR法が必要となる。この方法に必要なTNSALP遺伝子のプライマーの塩基配列はすでに報告されているので、これらの情報を用いて、細胞1個より増幅可能な条件を検討した。増幅された遺伝子がTNSALPであるかどうかについてはそれぞれの増幅された遺伝子内に存在する制限酵素部位が、既知のTNSAPLの遺伝子配列と一致するかどうかで判断した。同じ増幅法であっても細胞融解の方式によって増幅の程度の差が出ることが判明した。すなわち蛋白融解酵素を用いたものよりもアルカリ溶解法を用いた方が正確な増幅が期待できることがわかった。しかし、allele drop out(ADO)と呼ばれる、2本の染色体のうちの1本がうまく増幅されない減少についての検討を次に行った。低アルカリホスファターゼ症は常染色体劣性遺伝形式をとる疾患であるので、ADOがあっても正常のalleleの増幅がみられれば、少なくとも保因者であり、罹患はしていないと診断できる。しかし、あまりにADOの頻度が高いと、正確な診断という意味では問題が生じる。文献上はいずれの方法が良いかについては相反する報告があり、増幅する遺伝子によって違いがあるものと考えられた。そこでADOの頻度を検討して、さらに増幅率を加味して検討した結果、TNSALP遺伝子の増幅についてはアルカリ溶解法を用いた方が、増幅効率とallele drop outの率から考えて、良いと考えられた。
著者
中正 恵二 大山 秀樹 寺田 信行 山田 直子 山根木 康嗣 中村 秀次 浦出 雅裕
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

非アルコール性脂肪性肝炎発症(NASH)患者および脂肪肝(FLD)患者のそれぞれの歯周病に関わる臨床パラメーターを比較した結果,FLD患者に比べてNASH患者において,歯周病の病状の悪化が見られた。また,歯周病細菌に対する血清抗体価においてもFLD患者に比べNASH患者の方が高い傾向を示した。以上の結果から,歯周病が脂肪性肝炎の病態に関与することの可能性が示された。