著者
今井 哲司
出版者
星薬科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

がん疼痛成分の多くを占める神経障害性疼痛については、非ステロイド性抗炎症薬のみならず、モルヒネなどの麻薬性鎮痛薬も効きにくい場合が多く、その治療に難渋することが臨床上非常に深刻な問題となっている。これまでに研究代表者らは、慢性炎症性疼痛動物モデルにおいて麻酔下でfunctional MRI(fMRI)法に従い画像解析を行い、脳内疼痛関連部位の活性化が引き起こされることを明らかにしている。そこで本研究では、fMRIを用いて、脳内の神経活動の変化を指標に"痛みを可視化"し、それらの手法を基軸として薬効スクリーニングを行った。まず、我々は坐骨神経結紮による神経障害性癖痛における脳内疼痛関連領域の神経活性化について、fMRIのblood oxygenation level dependent (BOLD)シグナルを指標に評価を行った。その結果、神経障害性疼痛下では、疼痛シグナルの脳内中継核である視床や痛みの認知などに重要である前帯状回(CG)および一次体性感覚野(S1)領域での著明な神経活動の亢進が認められた。このような条件下、抗てんかん薬および帯状疱疹後神経痛治療薬であるガバペンチンあるいは抗てんかん薬、躁うつ病治療薬および三叉神経痛治療薬として使用されるカルバマゼピンについて、fMRI法に準じ、同様の検討を行った。その結果、神経障害性痔痛を有意に抑制する用量の両薬物を前処置した群においては、坐骨神経結紮による神経障害性疼痛における脳内疼痛関連領域の神経活性化は完全に抑制された。以上本研究より、fMRI法を用いて、神経障害性疼痛の発症ならびにその維持に関連する脳部位を特定し"痛みを可視化"することに成功した。また、神経障害性疼痛の治療において、ガバペンチンおよびカルバマゼピンが有効な薬物であることが明らかとなった。本研究のように、"痛みの可視化"を基軸とした薬効スクリーニングは、疼痛治療における優れた薬物選択アルゴリズムを確立するうえで有用であると考えられる。

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こんな研究ありました:fMRIを用いた痛みの可視化と慢性疼痛治療薬の新規探索に関する研究(今井 哲司) http://t.co/mB52lR9ma6
こんな研究ありました:fMRIを用いた痛みの可視化と慢性疼痛治療薬の新規探索に関する研究(今井 哲司) http://t.co/zpRoRwFPQB

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