- 著者
-
綾部 時芳
中村 公則
- 出版者
- 北海道大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2011-04-01
本研究は、小腸のPaneth細胞が分泌するαディフェンシンの作用から炎症性腸疾患の病因・病態を解明して新規治療を提案することが目的である。本年度は、αディフェンシンと腸内細菌からみた殺菌及び共生メカニズムを、cryptdin およびHD5と腸内細菌との会合から解析した。Acid-Urea PAGE、western blot法、sandwich ELISA等を用いた生化学的・免疫学的解析および殺菌活性測定によって、腸内常在細菌であるLactobacillus、Bifidobacterium等と、非常在菌(病原菌)であるSalmonella、Staphylococcus等でαディフェンシンとの会合状態が異なることを示した。また、クローン病モデルマウスを用いてαディフェンシン異常による腸内共生環境の破壊 (dysbiosis)の可能性について解析した。クローン病モデルマウスのパネト細胞顆粒のcryptdinおよびcryptdin分泌量についてRP-HPLC、Tris-Tricine SDS-PAGE、Acid Urea-PAGE、westen blot法およびsandwich ELISAで解析・測定して、病理病態進展におけるαディフェンシン異常の関与を明らかにした。さらに、小腸絨毛・陰窩におけるcryptdin、MMP7、CD24等の免疫局在を解析し、幹細胞とPaneth細胞が形成するニッチ相互作用の可能性を示した。以上のように、αディフェンシンの病態関与から、クローン病の新規治療法に繋がる重要な成果を得た。本研究で得られた新知見から、αディフェンシン異常によるdysbiosisがクローン病以外にも多くの疾患に寄与すると考え、実際に移植片対宿主病 (GVHD)における病態関与を証明した。