- 著者
-
田中 眞奈子
- 出版者
- 昭和女子大学
- 雑誌
- 若手研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 2014-04-01
本研究は、X線と異なる特性を持つ中性子を用いて鉄鋼文化財を分析し、結果の総合的解析により材質や内部構造を解明すること、そして最終的には鉄鋼文化財の非破壊分析手法を確立することを目的としている。平成29年度も「研究実施計画」に沿って研究を進め、以下のように意義のある成果を得ることが出来た。(1)日本刀断片、火縄銃断片に加え、個人蔵の日本刀、火縄銃、自在置物、そして本研究の最終目標であった美術館所蔵の大変貴重な鉄鋼文化財である自在置物のSPring-8での高エネルギーX線CT測定に取り組んだ。L28B2およびBL20B2で実験を重ね、また実験条件(空間分解能、密度分解能など)の調整・改善に取り組み、日本刀のように30mm程度の厚さのある鉄文化財でも、鋼中の非金属介在物(サイズは30~60μm前後)の配列を非破壊でも明瞭に観察できるようになってきた。(2)パルス中性子透過法を用いてこれまで分析してきた試料(鉄鋼標準試料、たたら製鉄により製造され日本古来の折り返し鍛錬や鍛接などの加工を行った試料(日本刀制作過程再現試料)、和釘、火縄銃、日本刀断片など)について、ブラッグエッジ解析による詳細な解析を進めた。なかでも日本刀制作過程再現試料は、各パラメーター(格子面間隔、歪、結晶子サイズなど)毎に2Dマッピング像の作成に成功し、格子定数の変化を指標とした焼き入れ範囲の可視化など、日本刀の制作工程と結晶組織変化の関係性を非破壊で解明することが出来、大きな成果を得た。(3)試料ごとに、高エネルギーX線を用いた分析結果と、中性子を用いた分析結果の比較検証を行った。X線と中性子の相補利用により非破壊での日本刀や火縄銃、自在置物などの具体的な制作技法や材料特性が解明されてきた。(4)研究成果は、国際会議BUMAⅨなど5件の発表(うち2件が招待講演、2件が国際会議)を通して積極的に公表した。