著者
森口 郁夫 松下 泰雄 広野 修一
出版者
北里大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

化学物質の毒性が化学構造から予測できれば、製品開発、環境汚染等の面でその恩恵ははかり知れない。本研究は、ヒト経口急性毒性(以下、ヒト毒性)および魚毒性の予測について適応最小二乗法(ALS81)、ファジイ適応最小二乗法(FALS88)を用いて検討を行った。1.データソース:ヒト毒性は、CTCP(5版)、RTECS(1981-82版)および日本薬局方等から収集し、総数504個、魚毒性はRTECSから329個の有機化合物に関するデータを収集し、各々毒性の強さに従って3等級に分類して用いた。2.構造記述子:化合物の化学構造の特徴を表すものとして、ヒト毒性は分子量、特定の原子(C、O、S等)、環(ベンゼン、キノン、等)、各種官能基、特徴的な部分構造については数、又は準数量変数、魚毒性は数、又はダミー変数であり、検討した記述子は各々60および63種である。3.構造・毒性相関モデルの生成:計算は東大計算機センターの電算機およびNEWSで行い、得られた最良の識別関数には、ヒト毒性では41種(ALS81)および40種(FALS88)、魚毒性では35種(ALS81)の記述子が含まれている。4.識別・予測の信頼性:識別関数による毒性等級の識別計算は、ヒト毒性ではALS81、FALS88とも439個(87.1%)および魚毒性では280個(85.1%)が正しく識別され、スピアマン順位相関係数(Rs)は0.858、0.860、および0.825であった。またリーブワンアウト法による予測計算は、411個(81.5%)、412個(81.7%)および256個(77.8%)の化合物の等級が正しく予測された。以上の識別・予測ともすべて0.1%の危険率で有意であり、所期の目的が達成できたと考えられる。

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