著者
山中 章弘
出版者
名古屋大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2017-04-01

遺伝子操作によって記憶力が悪くなる動物はたくさん存在するが、記憶力が良くなる例は数少ない。メラニン凝集ホルモン産生神経(MCH神経)は、視床下部だけに少数の細胞体が存在し、睡眠中に活性化される。MCH神経の生理的役割解明のために、MCH神経を時期特異的に脱落させたマウスを作成したところ、記憶が有意に良くなることを見いだした。このことは、レム睡眠中のMCH神経活動が、記憶抑制・消去に関わっていることを示している。本研究では、MCH神経脱落により、神経回路の機能シフトが生じ、記憶が向上するメカニズムに迫り、睡眠と記憶消去との関係も明らかにすることを目的としている。MCH神経の活動を光遺伝学、化学遺伝学にて操作可能なマウスを作出し、神経活動操作を行った。その結果、MCH神経活動を活性化させると、海馬依存的な記憶が阻害・消去されること、逆に抑制すると記憶が向上することを見いだした。これらの結果から、MCH神経活動が海馬において記憶制御に関わっていることを示している。さらに、MCH神経活動をカルシウムインジケータであるGCaMP6を用いてインビボ記録するファイバーフォトメトリーを適用し、脳波筋電図記録による睡眠解析と同時に行ったところ、MCH神経活動がレム睡眠中、覚醒中に高くなることを見いだした。そこで、MCH神経活動をレム睡眠中、覚醒時それぞれにおいて光遺伝学で抑制を行った。その結果、レム睡眠中のMCH神経活動を抑制すると海馬依存的な記憶に影響があることを見いだした。

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