著者
武田 誠一
出版者
九州保健福祉大学大学院社会福祉学研究科
雑誌
最新社会福祉学研究 = Progress in Social Welfare Research (ISSN:18809545)
巻号頁・発行日
no.14, pp.93-100, 2019-03-31

本研究では,「自立支援型」地域ケア会議での助言内容に,どのような特徴が見られるかを分析した.対象は,三重県伊勢市の「自立支援型」地域ケア会議である「生活支援会議」の助言内容を取り上げた.分析には計量テキスト分析ソフトKH Coder を用い,「共起ネットワーク」,「階層的クラスター」を作成し,出現パターンが似通った助言内容をカテゴリーに分け分析した.結果,2017年度(4月~3月)「生活支援会議」での助言は306件,総抽出語数は10,472語,異なり語数は2,132であった.「生活支援会議」における助言では【身体機能(ADL)に関する助言】に偏ることなく,【家族支援に関する助言】,【地域参加に関する助言】,【食生活に関する助言】,【口腔ケアに関する助言】など多岐にわたる助言が行われていることがわかった.
著者
畑田 惣一郎 前田 直樹 吉牟田 直孝
出版者
九州保健福祉大学大学院社会福祉学研究科
雑誌
最新社会福祉学研究 = Progress in Social Welfare Research (ISSN:18809545)
巻号頁・発行日
no.14, pp.45-53, 2019-03-31

気分障害や神経症性障害により,就労能力のある多くの患者が休職や退職に至ることは,深刻な社会問題である.本研究の目的は,(1)気分障害と神経症性障害に罹患した労働世代の就労状況および生活実態を把握すること,(2)対象者の就学期の体験および家族歴を分析し,就学者と無職者間の心理社会的問題の違いを検討することである.精神科病院の患者133名のカルテより後方視的調査を行った結果,「無職」が3割であり,低収入層もおよそ3割と推測された.また,睡眠障害や消化器症状といった身体症状は,就労に関わらず多くの者が抱えていた.就労実態の違いが生じる要因分析では,無職において転校・不登校経験,未婚・離婚歴がそれぞれ有意に多かった.このような労働世代の精神障害者に対する支援を行う際は,治療と並行して就労支援を行い,就学期から継続する心理的問題や,家族環境も視野に入れた心理・社会的アプローチが重要である.
著者
大谷 明弘
出版者
九州保健福祉大学大学院社会福祉学研究科
雑誌
最新社会福祉学研究 = Progress in Social Welfare Research (ISSN:18809545)
巻号頁・発行日
no.14, pp.77-83, 2019-03-31

本研究は,認知症介護研修の現状と課題を確認した上で,施設介護職員に対する認知症介護教育に「コンピテンシー(competency)」の概念を導入することの意義を明らかにすることを目的に文献研究を実施した.論文検索には,CiNii,J-STAGE,医中誌 webを活用し,11本の論文が該当した.結果,施設介護職員のコンピテンシーに関する研究がほとんど行われていないことが明らかになった一方で,隣接領域である看護師や主任介護支援専門、社会福祉士等に関しては,既にいくつかの研究が行われており,各々の専門教育に導入され始めている現状が明らかになった.このことは,施設介護職員を対象とした認知症介護教育にもコンピテンシーの導入が可能なことを意味している.今後の課題は, 施設介護職員が置かれている労働環境の現状把握,認知症介護における熟練介護職員の優れた行動特性の具体的な概念および省察的実践との関連性を明らかにすることである.