著者
坂本 雅子
出版者
名古屋経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究の目的は、日中戦争以後のアジアでの財閥商社の活動を明らかにすることであり、三井物産の活動を事例にして研究をおこなった。分析の重点は、戦時下での軍部と一体となった活動においた。たとえば、財閥商社が軍の依穎・命令によって中国で従事した農産物の収買活動や、アジア地域での物資流通一特にベトナム・タイから日本・中国への食糧輸入等-で果たした役割を明らかにした。占領地への食糧確保こそ現地軍の食糧補給と占領地の治安確保にとって最も重要であり、戦争の帰越を決するものであったが軍部は一貫して財閥商社一特に三井物産と三菱商事に全面的に依拠せざるをえなかった。また軍配組合の活動も占領地の軍票の価値を維持し、食糧などの物資収買を行うために重要なものであったが、ここでも三井物産を中心とした商社の役割は大きかった。本稿ではまた、戦時下の三井物産のアヘン取扱いについても明らかにした。日中戦争において日本軍はアヘン売却しその利益を機密費等に使用したり、戦地での物資収買にあたって 通貨がわりとして利用するなどしたが、このアヘン売買を中心となって担ったのが三井物産であった。三井物産がアヘン売買に関与したことは極東国際軍事裁判での供述によって、以前から知られていたが、本研究は三井物産の内部資料で初めてその全容を明らかにした。以上のように、アジアで、軍部と結びつき戦争遂行の重要な役割を担うとともに、戦争犯罪の最も汚れた部分をも担った戦時下の三井物産の活動を解明した。
著者
田中 秀佳
出版者
名古屋経済大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

国際人権法の、無償教育をめぐる法制原理の整理と分析を進めてきた結果、1「無償」の概念と範囲が、わが国のそれとは大きく異なること、2立法・行政による無償教育施策の実行の程度を計測する指標枠組みが提起されていること、3政府が国際人権法の規定を実行しなかった場合には、社会権であっても司法による判断がなされ得ることが明らかになった。ここから、1国際人権法と国内教育条件整備法との整合性をめぐる詳細な法的分析、2無償教育の先進国における国際人権法と教育条件整備法との整合性/コンフリクトの事例検討、3教育の権利保障の実現程度を指標化する理論研究の整理と指標の分析の必要が研究課題として析出された。
著者
川津 雅江
出版者
名古屋経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の成果によれば、近代イギリスに生じたフェミニズムの言説は、ホラティウスのいう「男性的なサッポー」のような男性に匹敵する知性をもつ女性を理想像として提示したとき、そのセクシュアリティも「男性的な」(古来女性同性愛もしくは淫乱を含意)ことを否定し、むしろ異性愛関係において「無性的な」(情欲がない)ことを強調した。こうした男性的女性の無性化は、強制的な異性愛文化・社会の出現と関連があった。
著者
鈴木 利治 楊 治 胡 乃武 周 才裕 かく 燕書 児玉 光弘 上山 邦雄 三浦 東 HAU Yanshu 二瓶 敏
出版者
名古屋経済大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

1 調査研究の目的と方法1970年後半以降中国では、社会主義市場経済の構築という方向での経済運営が劇的に展開されてきている。それは、現実的には、企業改革と開放政策という、2つの政策を軸に進められてきた。企業改革については、国有制度を残しつつ、企業経営において、競争原理を積極的に導入し、計画経済的な集中計画/管理の持つ経済阻害要因の排除を試みてきた。そして、計画経済への回帰が不可能なところにまで進展してきている。このような経済運営を進めるに当たり、競争力の基礎を形成する機械設備と技術水準の面で、老朽化・数量不足と水準の低さが足枷となっている。また急激な経済成長を支えるためには、原材料と設備が必要であるが、それを確保するための資本蓄積が無いという状況で、外資導入と技術移転のためにはが開放政策は不可欠であった。しかし、中国経済は、潜在的経済発展の大きな可能性を秘めているにもかかわらず、現実の経済運営において、必ずしも、それを顕在化する能力を発揮しているとはいえない。産業の発展は、経済発展の原動力となるものであるので、産業の自律的発展なしには、経済成長も立ち枯れ状態となる危険がある。中国における産業の現状とその自律的発展の条件を整理し、その課題を乗り越えるための施策を検討することは不可欠といえよう。かかる視点に立ち、基礎的な産業構造の解明を通して、生産力拡大・国際競争力強化の可能性と条件を考察することに本研究の目的がある。本研究は、(1)日中の研究者で共同研究をする、(2)テレビ、自動車、工作機械、鉄鋼、電力の5産業を「鍵の産業」として中心に据える、(3)企業、工場それに施設でのヒヤリングと見学による実態調査を主要な研究手段とするという方法を重視して進めた。2 中国リーディング産業の現状2.1 テレビ組立産業90年代に入り、急激な市場経済化が進み、テレビ産業における企業間競争が激化し、企業の分化・合併・淘汰が進んだ。1996年春からは、「価格競争」が始まり、テレビ産業の再編成と両極化がいっそう進むこととなった。(1)長虹電子集団公司のような内部蓄積型企業拡大、(2)熊猫電子集団公司のような政治救済型吸収合併になる企業拡大(3)牡丹電子集団公司のような地域統合型吸収合併による企業拡大(4)康佳電子集団股分有限公司のような多省籍企業型吸収合併による企業拡大(5)「熊猫」-フィリ