著者
田中 伸幸 菅村 和夫
出版者
地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

SARS-CoVの感染成立にはウイルスエンベロープのSpike(S)蛋白と標的細胞上のACE2との結合が必要である。一方、感染がACE2単独で惹起されるか否かは明らかではない。本研究では、分泌型Spike、Spikeをエンベロープとする偽ウイルス、を用いて細胞への吸着、取り込み、感染について検討した。分泌型Spikeを用いた化学架橋によって、ACE2とともにDC-SIGNおよびL-SIGNが共沈した。ACE2とDC-SIGN, ACE2とL-SIGNの会合は、Spike非存在下でも確認された。しかし、ウイルス吸着におけるDC-SIGNおよびL-SIGNの役割はほとんどなかった。細胞内へのウイルス取り込みにおいては、ACE2の細胞質内領域は不要であったが、DC-SIGNおよびL-SIGNの細胞内領域は必要であった。これらの結果から、SARS-CoV感染においてはDC-SIGN/L-SIGNの細胞内領域が重要であることが明らかとなった。
著者
島 礼 山下 洋二 渡邊 利雄 菅村 和夫
出版者
地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

我々は、低分子2重基質ホスファターゼの機能解析を行い、二つの分子(DUSP26およびDUSP13B)の細胞内基質とその生理的機能を明らかにすることに成功した。 DUSP26が、KIF3A(KIFモーター複合体のサブユニット)に結合し、KIF3Aを介してKAP3を脱リン酸化することを明らかにした。さらに、DUSP26の脱リン酸化活性は、N-Cadherinおよびβカテニンの細胞-細胞の境界への集積や、細胞と細胞の接着性の維持に働いていることを明らかにした。一方で脳腫瘍のグリオブラストーマにおいてDUSP26の遺伝子発現を調べたところ、DUSP遺伝子プロモーターに著しいメチル化とともに、発現の減少が認められ、グリオブラストーマの持つ高い浸潤性の原因の一つに、DUSP26遺伝子メチル化/発現減少があることが考えられた。 DUSP13Bを、新たなMAPKホスファターゼとして同定した。DUSP13Bは、MAPKの特にJNKとp38を特異的に脱リン酸化する活性を持つことから、ストレス経路に働く新たな制御因子と考えられた。
著者
伊藤 しげみ 田沼 延公 佐藤 郁郎
出版者
地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所)
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

解糖系酵素ピルビン酸キナーゼM(PKM)の選択的splicing制御の蛍光可視化に取り組んだ。蛍光タンパクを用いたレポーター遺伝子を染色体に組込んだマウスを作製し、発がん実験を施行した。発がん型Krasを誘導発現させることにより、上述マウスに短期間で効率よくて肺がんを誘導できた。それら肺がんでは、期待通り、M2型PKMの発現が著しく上昇していた。しかし、それに対応するレポーター遺伝子由来の蛍光を検出することができなかった。従って、当初目的のためには、さらなるレポーター遺伝子の改良、あるいはトランスジェニックマウス作製法の変更が必要と思われる。