著者
笠島 理加 井元 清哉 廣島 幸彦 山口 類
出版者
地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

現在のがん臨床シークエンスは、がん細胞のみを対象としたゲノム情報に対して効果のあると推察される分子標的薬を提案している。更に、治療到達率の飛躍的な向上を目指すには、癌の進展(増殖、生存、浸潤、転移)を促進している微小環境の情報も加味することが重要であると考えられる。本研究では、臨床で使用可能なbulk のがん組織のゲノム情報を数理的に各細胞グループに分離、分析する新規Virtual dissection モデルを構築し、がん細胞とそれを取り巻く微小環境、両方のゲノム情報を加味した、より高精度な次世代がんゲノム医療の確立を目指す。
著者
笹田 哲朗 岸 裕幸 東 公一
出版者
地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

(1)TCR遺伝子導入T細胞を用いたネオアンチゲンスクリーニング系の確立各種T細胞表面分子(PD-1, TIM-3, 4-1BB)を発現するT細胞群と発現しないT細胞群とをsingle cell sorting(90 well)し、各々のT細胞クローンの発現するT細胞受容体(TCR)遺伝子配列を同定した。大腸がん(2例)、腎臓がん(3例)組織由来の腫瘍浸潤T細胞を用いて検討したところ、① PD-1, TIM-3, 4-1BBを発現するT細胞群には腫瘍局所で選択的に増加したと思われるT細胞クローンがしばしば高頻度に同定されること、② PD-1, TIM-3, 4-1BBを発現するT細胞群と発現しないT細胞群とを比較したところ、各群間で発現するTCR遺伝子配列が大きく異なること、などが判明した。現在、分離したT細胞クローンから同定したTCR遺伝子を導入したT細胞株を作成中である。今後、多数のTCR遺伝子導入T細胞株のネオアンチゲン反応性(サイトカイン分泌など)を比較・検討することにより、T細胞クローンの分離頻度の高低とネオアンチゲン反応性の有無との相関を検証する予定である。(2)ゼノグラフトモデルの樹立大腸がん5例、腎臓がん10例に由来するがん組織をNSGマウスに移植したところ、現在までに大腸がん2例、腎臓がん1例のゼノグラフトモデルが樹立された。今後、樹立されたゼノグラフトモデルに、同一患者において同定されたTCR遺伝子を導入したT細胞株を移入することにより抗腫瘍効果を検証する予定である。(3)抗PD-1抗体で治療された非小細胞肺がん患者10例(有効例、無効例を各5例)から末梢血、腫瘍組織を採取し保存した。今後、分離したT細胞クローンからTCR遺伝子配列を同定し、ネオアンチゲン反応性を確認する予定である。