著者
白岩 広行 シライワ ヒロユキ
出版者
大阪大学大学院文学研究科社会言語学研究室
雑誌
阪大社会言語学研究ノート
巻号頁・発行日
vol.8, pp.14-29, 2008-03

福島方言の文末詞ケは「思い出し」の意味しか持たない(§2. )。しかし、ノダにケが接続したノダッケという表現のなかに、ケの「思い出し」の意味にはそぐわないものが見られる( §3. )本稿では、このノダッケを、ひとまとまりの文末表現として分析した。その特徴は以下の通り。形態統語論的特徴 : 必ず平叙文の文末に生起する。また、いずれの文末詞とも共起しない(§4.)基本的意味 : 先行文脈に対する説明づけ、あるいは後の文脈の前置きとして、聞き手にとって未知と話し手が考えている情報を提示する(§5. 1.)。ノダッケは、ノダと同じく説明づけに関わる表現だが、ノダよりも使われる用法は限られている。つまり、ノダの様々な用法のうち、次の3つの条件を満たす場合にしか使えない(§5. 2.) 。①対人的な用法②前か後いずれかの文脈との関係づけが見られる③当該の情報が聞き手にとって未知である(と話し手が考えている)談話的な面では、話し手のターンを維持するために使われることがある(§5. 3. 1.)。また、聞き手に反発をするような場合、特殊な現れ方をする(§(5. 3.2)
著者
野間 純平 ノマ ジュンペイ
出版者
大阪大学大学院文学研究科社会言語学研究室
雑誌
阪大社会言語学研究ノート
巻号頁・発行日
vol.10, pp.55-65, 2012-03

本稿では,大阪方言の文末詞「ワ」「カ」に後接する「イ」の意味記述を行った。その分析に当たっては,「ワ」と「ワイ」を比較し,「カ」と「カイ」を比較し,両者に共通する「イ」の意味を抽出するという方法を用いた。そしてその結果,「ワイ」「カイ」の「イ」は,「文末詞の聞き手目当て性を強める」という機能を持っていることが明らかになった。具体的には,聞き手に対する「突きつけ」や「責め」など,様々な意味として表れる。それは,「イ」が形式的に独立性が低く,意味も抽象的であることと関係する。また,本稿では「ワイナ」「カイナ」という形式を考察の対象から外したため,そちらの形式についても考察を深め,「イ」の持つ意味をより詳細に記述することが今後の課題となる。
著者
福居 亜耶 フクイ アヤ Fukuii Aya
出版者
大阪大学大学院文学研究科社会言語学研究室
雑誌
阪大社会言語学研究ノート
巻号頁・発行日
vol.12, pp.51-70, 2014-03

本稿では、筆者の内省と自然談話での使用例をもとに京都府福知山市方言における命令表現について記述を行い、以下のことを指摘した。 (a) 命令表現として主に、命令形命令、連用形命令、テ形命令、ナル系命令(ナイナ形命令、ナン形命令、ナ形命令)が用いられる。 (b) 《命令》の発話機能においては、命令形命令、連用形命令、ナイナ形容令、ナ形命令が用いられる。命令形命令、ナイナ形命令は緊急性が高い場合、または、〈違反矯正〉やく非難〉の場面で用いられる。連用形命令とナ形命令はやややさしいニュアンスとなる。 (c) 《依頼》の発話機能においては、もっぱらテ形命令が用いられる。 (d) 《聞き手利益命令》の発話機能においては、命令形命令、連用形命令、ナ形命令が用いられる。命令形命令と連用形命令は単にその行為の実行を要求しているが、ナ形命令が用いられる場面は〈確認的指示〉のニュアンスが強い。 (e) 《勧め》の発話機能においては、連用形命令、ナイナ形命令、ナン形命令が用いられる。ナイナ形命令は特に《勧め》が断られることが考えにくい場面で用いられる。また、連用形命令とナン形命令が用いられる場面を比べると、連用形命令の方が《勧め》のうちでは緊急性が高い。