著者
大野 行弘
出版者
大阪薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

我々は、シナプス開口分泌を促進的に調節するシナプス小胞タンパク質2A(Synaptic vesicle glycoprotein 2A: Sv2a)に着目し、Sv2a遺伝子にミスセンス変異を導入したSv2a変異(Sv2aL174Q)ラットの行動表現系を解析することにより、シナプス分泌障害と精神疾患の発症脆弱性との関連を研究している。本年度は、統合失調症で異常がみられる驚愕反応プレパルス抑制現象について検討を加えるとともに、大脳辺縁系の側坐核におけるドパミン遊離の変化についてin vivo microdialysis法を用いて解析し、以下の結果を得た。①実験にはSv2a変異ラットおよびF344ラット(対照)を使用した。②生理食塩水あるいはメタンフェタミン(1 mg/kg)を投与し、15分後に驚愕反応プレパルス抑制試験を行った。③プレパルス条件を70dB+120dB、75dB+120dB、80dB+120dB、85dB+120dBの音量範囲に設定し検討した結果、Sv2a変異ラットではF344ラットに比べ、プレパルス抑制反応が有意に低下していることが明らかとなった。④覚せい剤であるメタンフェタミンを投与した場合、メタンフェタミンによるプレパルス抑制の低下はより顕著となり、Sv2a変異がプレパルス抑制機構を障害することが確認された。⑤驚愕反応プレパルス抑制は、聴覚情報が体性感覚野に至る経路の制御機構であり、統合失調症などの精神疾患において障害を受けることが知られている。このことから、 Sv2aの機能低下が精神疾患の発症脆弱性を亢進する可能性が示された。さらに、⑥側坐核における脱分極刺激およびメタンフェタミンによるドパミン遊離を評価した結果、 Sv2a変異がドパミン遊離を亢進することが明らかとなった。
著者
松島 哲久
出版者
大阪薬科大学
雑誌
大阪薬科大学紀要
巻号頁・発行日
no.1, pp.65-73, 2007
著者
藤田 栄一
出版者
大阪薬科大学
雑誌
がん特別研究
巻号頁・発行日
1984

本研究班では新しい化学構造を有する優れた抗癌剤の生産的開発ならびにそれらの有用性について組織的に研究している。新抗癌剤の合成開発研究分野からは、放射線制癌における新規低酸素性癌細胞増感剤としてニトロトリアゾール誘導体の開発、カンプトテシン系新規抗癌剤の新しい簡便合成法のための重要中間体の好収率合成、抗腫瘍性天然物メガホン、スパトールなどの能率的不斉全合成、新規核酸系抗癌性化合物2′、3′-ジデオキシ-2′-(または3′-)置換リボフラノシルシトシンの開発、抗腫瘍活性シソ科ジテルペンの一種シコクシンの活性増強化、分子軌道法的計算を基盤とする抗腫瘍性シクロペンテンジオン類の合成開発、脳腫瘍の化学療法改善を企図するオキシセルローズ-アドリアマイシン複合体の合成開発、制癌性トロポロン誘導体の合成と構造活性相関の解明などに成功した。天然資源からの新規抗癌剤の探索に関する分野においては、中国産シソ科植物から抗癌性ジテルペン、ラブドロキソニンAの単離構造決定、抗腫瘍性多糖体誘導血清内腫瘍退縮因子の癌治療の応用に関する問題点の解明、放線菌代謝産物から新規抗癌性天然物ラクトキノマイシン-A及び-B、カズサマイシン、アワマイシン、トリエノマイシン-A及び-Bなどの単離構造決定、茜草根より抗癌活性スペクトル幅の広い2環性ヘキサペプチドの単離と化学構造の解明などに成功した。新規抗癌性化合物SM-108、ネプラノシンA、MST-16などの投与法、他の薬剤との交叉耐性ならびに作用機序に関しても興味ある新知見を得た。本年度は本研究班が認可されて2年目になるが、上述の通り数々の新知見ならびに有望な新規抗癌性化合物が、合成と天然資源からの探索の両面から見出されており、可成りの成果が得られたと考えている。さらに各分野研究者の専門的知識と情報を結集して本研究課題を強力に推進させたい。