著者
杉田 久子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.15-25, 2012 (Released:2013-08-03)
参考文献数
56
被引用文献数
3

本研究の目的は,クリティカルケア看護師のexpertiseの概念分析を行い,クリティカルケア看護実践領域への活用に示唆を得ることである.1983年~2007年までの看護学,医学の領域から43文献を分析対象とし,Rodgersの概念分析法を参考にした.結果,属性に〔プランニングプロセス〕,〔ケアリングプロセス〕,〔アドバンスプロセス〕,先行要件に〔動機・資質〕,〔リソース〕,〔文脈上の制約〕,帰結に〔治療の成功〕,〔ヒューマンケア〕,〔ケアの質の向上〕が抽出された.定義には「初期の推論,熟考された明敏な意思決定,および状況的文脈に基づく判断とともに,患者および医療者との相互作用を伴う優れたケアリングを実践し,反省的な実践を繰り返して蓄積される実践的知識の修得プロセス」が導かれ,よりよい患者アウトカムを導く看護師の継続的な態度を表す動的概念として説明された.結果は,クリティカルケア看護師のexpertiseを観察可能な現象として捉えることを可能にし,看護師の実践活動における客観的指標を提供することに貢献するが,実践現場での精錬と検証が課題である.
著者
宮本 毅治 武田 宜子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.81-86, 2016-03-22 (Released:2016-03-22)
参考文献数
13
被引用文献数
1

目的:人工呼吸器装着患者の鎮静管理において,海外では看護師による鎮静管理の効果が示唆されているが,わが国での調査は十分ではない.そこで,本研究では包括的指示に基づく看護師による鎮静管理について,目標鎮静度の達成度から,医師による鎮静管理との差異を調査した.方法:人工呼吸器装着患者10 名(医師調整群5名・看護師調整群5名)に対して2時間おき3日間の鎮静度の推移を記録し,2群の差や特徴について記述的に分析した.結果:目標鎮静度から乖離した頻度(割合)は,医師調整群25.4 ± 3.9 回(68.6%),看護師調整群18.0 ± 4.7 回(48.6%)であった.目標鎮静度からの乖離の程度を表す乖離の幅は,医師調整群1.1 ±0.4,看護師調整群0.6 ± 0.2 であり,看護師調整群の方が目標鎮静度から乖離した頻度が少なく,乖離の幅も狭い傾向にあった.結論:医師による鎮静剤投与量調整と比較した場合,包括的指示に基づく看護師による投与量調整の方が目標鎮静度に沿った鎮静管理を行えることが示唆された.
著者
高田 望 平野 かよ子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.67-75, 2015-10-01 (Released:2015-09-30)
参考文献数
20

本研究は,ICU において医師・看護師が終末期医療へのシフトをどのような情報・状況をもとに判断しているのかを明らかにすることを目的とした.ICU に勤務する医師・看護師各4名に半構成的面接を行い,質的帰納的に分析を行った.その結果,28 コード,9サブカテゴリーから《救命の困難さ》と《治療継続の不適切さ》の2カテゴリーが抽出された.《救命の困難さ》は,【臓器機能の悪化】【治療に対する反応の低下】で構成され,これ以上の治療を継続しても患者の命を救うことが困難であるという情報である.《治療継続の不適切さ》は,【本人および家族の自己決定】【その人らしさの消失】【家族内の患者の居場所の欠如】などで構成され,これ以上治療を継続することは患者の利益にならないことを示す情報である.医師は《救命の困難さ》に重点を置いて終末期医療へのシフトを判断するが,看護師は《救命の困難さ》だけでなく《治療継続の不適切さ》を重視して終末期医療へのシフトを判断していた.この医師と看護師の判断の特徴の背景には,職務上の役割の違いがあることが示唆された.