著者
中原 ゆかり
出版者
日本ポピュラー音楽学会
雑誌
ポピュラー音楽研究 (ISSN:13439251)
巻号頁・発行日
no.8, pp.35-44, 2004

本稿の目的は、1950年代はじめから1970年代後半までのハワイで日本のポピュラー音楽の演奏を行っていたナイト・クラブについて報告することにある。これらのナイト・クラブは、1950年代はじめから1960年前後までが数も多く、生演奏の他に日本舞踊やストリップ・ショー等もあり、ドアの外で客たちが並ぶほどであった。その後1960年代から1970年代へと時代が下るにつれて数も減り、演奏する曲目もアメリカのポピュラー音楽の占める割合が増えて、1970年代後半には姿を消した。<br>ナイト・クラブの状況から、全く日本のポピュラー音楽のみを好んでいたのはごく一部の二世までであり、三世以降の日本のポピュラー音楽の愛好者はアメリカのポピュラーも愛好していると推察できる。
著者
木島 由晶
出版者
日本ポピュラー音楽学会
雑誌
ポピュラー音楽研究 (ISSN:13439251)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.16-39, 2006
被引用文献数
1

近年の路上演奏は、都市部における青年文化の文脈で捉えられやすい。本稿はこの観点を継承し、大阪有数の都市である心斎橋周辺をモデル・ケースとして、路上文化の今日的な様相を示す。分析の前半では、169名分のインタビュー・データを整理して演者の意識の傾向を把握する。これをふまえて後半では、フィールド・リサーチの知見を導入して路上文化の特色を位置づける。以上の分析から得られた知見は、つぎの3点である。(1)路上文化が定着した要因には、通行人に対する意識の低下よりも、路上に対する安心感の高まりが大きい。(2)路上で自由に演奏してもよいという感覚は、今日では演者当人をこえて、演者をとりまく警察や自治体の側に波及している。(3)こうした状況の変化は、演者の二極化傾向を促進させる。一方は、通行人を意識しないで気ままに演奏を楽しむスタイルであり、他方は、通行人を強く意識してレコード・デビューを目指すスタイルである。