著者
栗田 知宏
出版者
The Japanese Association for the Study of Popular Music
雑誌
ポピュラー音楽研究 (ISSN:13439251)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.3-17, 2007 (Released:2009-10-29)
参考文献数
21

アメリカの人気白人男性ラッパー、エミネムは、リリックのなかでデビュー以来女性や同性愛者にまつわる「差別的」な表現を多用してきた。しかし、それらに対する非難はやがて肯定的な評価へと変化していく。では、彼の表現に対する肯定的な解釈はどのような受容状況のもとで加えられていったのだろうか。本稿では、エミネムについて語られたアメリカのヒップホップ雑誌とロック雑誌の記事を対象として、音楽ジャンルの真正性・正統性指標によって彼の「差別」表現がヒップホップ/ロックとして意味づけられていく様相について考察する。
著者
屋葺 素子
出版者
The Japanese Association for the Study of Popular Music
雑誌
ポピュラー音楽研究 (ISSN:13439251)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.17-34, 2004-12-28 (Released:2009-10-29)
参考文献数
34

本稿では、台湾で日本のポピュラー音楽が広まっている背景の一端を明らかにするために、カバー曲を取り上げ考察を行う。日本のメロディに中国語の歌詞がつけられたカバー曲は戦後より現在まで存在し続けている。しかし、時代時代に応じてカバー曲が持つ意味は変容しており、その特徴は次のようにまとめることができる。1)戦後から1960年代では、言語の政策などによって台湾語の楽曲が不足している代わりとしてカバー曲が制作された。2)1970年代から80年代ではとにかく楽曲を大量に必要としたため、「穴埋め」としてのカバー曲が求められた。日本のメロディであることを隠すということも行っていた。3)1990年代以降においては、日本・台湾の歌手の互いのプロモーションに使用されるなど、カバー曲が積極的な意味をもち、再び日本を意識したカバー曲が増加した。
著者
永井 純一
出版者
The Japanese Association for the Study of Popular Music
雑誌
ポピュラー音楽研究 (ISSN:13439251)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.96-111, 2006

近年、ロックフェスティバルをはじめとする音楽イベントが隆盛である。それらは、かつてのようにカウンターカルチャーの決起集会的なものではなく、レジャー感覚で楽しむものとして定着しつつある。そこでは、ポピュラー音楽の新たな受容のスタイルが生み出されている。このとき聴衆は「参加者」として新たな意味が付与され、主催者とともにフェスティバルを作り上げるような、積極的な存在として捉えられている。音楽受容が多様化するなか、こうした現象はポピュラー音楽研究のさまざまな観点から論じられるべき、興味深い現象であるといえよう。本報告では彼らのエスノグラフィ通じて、現代の積極的な聴衆としてのロックフェスティバルの参加者像を描くことを目的とする。
著者
南田 勝也
出版者
The Japanese Association for the Study of Popular Music
雑誌
ポピュラー音楽研究 (ISSN:13439251)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.35-50, 1998-11-30 (Released:2009-10-29)
参考文献数
18

This paper gives analysis on the value systems that form the characteristics of the rock music culture, in reference to the theories of Simon Frith and Pierre Bourdieu. In this examination of somecharacters in the society and the music culture, especially in the counter-culture scene, which is the early years of rock music mainly themiddle and late 1960's, three distinctive indicators are identified integrating varied aesthetic consciousness and values around the rock music. That is, the ‘outside’ indicator represents intention of downward orientation within the framework of social hierarchy, the ‘art’ indicator represents the challenging intention towards the pure arts, and the ‘entertainment’ indicator is also defined as acquiringpo pularity.
著者
溝尻 真也
出版者
The Japanese Association for the Study of Popular Music
雑誌
ポピュラー音楽研究 (ISSN:13439251)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.112-127, 2006 (Released:2009-10-29)
参考文献数
32

ミュージックビデオ(MV)は、1980年代以降日本でも広く受容されるようになったが、特に1980年代半ばの日本におけるMV受容の拡大に極めて大きな役割を果たしたのが、MVを紹介するテレビ音楽番組と、ビデオを用いてそれを録画しコレクションしようとするマニアの存在であった。こうしたマニアの出現には1950年代末から続くFM放送受容の流れがあり、MV番組の生成プロセスとは、こうしたポリティクスの中で、それまでとは異なった形のテレビ音楽番組が生成されていくプロセスであった。本論は、こうしたマニアという場とビデオというメディア・テクノロジーとのかかわりが、いかにMVを受容する場を形成していったのかを明らかにするものである。
著者
田中 健二
出版者
The Japanese Association for the Study of Popular Music
雑誌
ポピュラー音楽研究 (ISSN:13439251)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.80-95, 2006 (Released:2009-10-29)
参考文献数
30

アメリカの伝統的カントリーミュージックの歌詞の中には、暴力と死を歌ったものがある。男が女を理由も言わずに惨殺する歌詞がよく見られる。なぜなのか。カントリーミュージックの成立・発展過程を考えれば、アメリカの南部性も考察しなければならないことが分かる。その南部の人達の内面的精神を、いくつかの歌詞を例にとり、本論文では論じていく。そして南部のゴシック性をともなった歌詞は現代カントリーにまで受け継がれているのだろうか。現代アメリカのカントリー歌詞が南部の人達の気質を継承しつつ、時には荒々しい男の描写を好んで歌う実態を検証する。カントリーミュージック歌詞の残忍性と多様性を、その継続性の観点から検証する。
著者
久保田 翠
出版者
The Japanese Association for the Study of Popular Music
雑誌
ポピュラー音楽研究 (ISSN:13439251)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.40-57, 2006 (Released:2009-10-29)
参考文献数
14

本稿は20世紀中葉を代表する2人のアフリカ系アメリカ人の演説の音楽的分析である。より先行する世代の説教師CLフランクリンの説教は、興奮してくるにつれ、ブルース的な音階をなぞる様を呈したが、この種の「黒人音楽」的特徴を、M.L.キングJr.とマルコムXが、どのように保持または逸脱しているかを調査し、可能な範囲で記譜を試みた。その結果、前者ではピッチの上昇によって漸次的に感情を盛り上げていく手法が明らかであり、後者では一定のテンポとピッチで矢継ぎ早に発し続けるアタックの強い音節が、時にシャッフル・ビートに漸近しながら、スウィングに似た刺激をもたらしていることが理解された。
著者
土屋 唯之
出版者
The Japanese Association for the Study of Popular Music
雑誌
ポピュラー音楽研究 (ISSN:13439251)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.20-30, 2000

What does 'Yesterday Once More' mean? In the original version by John Bettis, we can see it as 'Yesterday, Once More, ' but now the title 'Yesterday Once More' is known well. Therefore, we show that we can interprete this as an adverbial phrase, a noun phrase (Yesterday as a subject and as an object), and Yesterday as a vocative. As a result, 'Yesterday Once More' may be better than 'Yesterday, Once More' because the former makes us imply various kinds of interpretations.<br>We also show that sha-la-la-la, wo-o-wo-o and shing-a-ling-a-ling are the introduction of some hit songs before the publication of 'Yesterday Once More' (1973).<br>As for "It's yesterday once more" we can find twice, we cannot understand its true meaning until we interprete them as "It's yesterday that I lost my love once more" and "It's the song 'Yesterday Once More.'"
著者
井手口 彰典
出版者
The Japanese Association for the Study of Popular Music
雑誌
ポピュラー音楽研究 (ISSN:13439251)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.3-16, 2004-12-28 (Released:2009-10-29)
参考文献数
22

筆者の考えによれば、いわゆる「ストリートミュージシャン」という言葉によって示される対象は、特に90年代後半からの日本において大きく変質してきている。旧来的には当然であった「芸を演じる」という感覚を持ち合わせない者たちが出現しているのだ。しかしそのような変質に着目する研究的視点は未だ少なく、旧来的なストリートミュージシャン像との間に混乱をきたしている。本論文は、近年現れた「非-芸人」とでも呼びうる新たなストリートミュージシャンを、特に他者との関係性から分析し、旧来的なものとは区分して捉える重要性を提言する。またそのような異質なストリートミュージシャンたちが現れてきた背景を明らかにし、その活動が生み出される機制を考察する。