著者
藤本 修平 今 法子
出版者
日本公衆衛生理学療法研究会
雑誌
日本公衆衛生理学療法雑誌 (ISSN:21895899)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-13, 2016 (Released:2018-03-16)
参考文献数
20

根拠に基づく医療の実践(Evidence based practice)は、手に入る最良のエビデンス(1本の論文ではなく、エビデンスの総体)に加え、患者の価値観、資源、専門家の経験も考慮し行うものである。最良のエビデンスを系統的に探索し、患者の価値観、益と害のバランスなどから推奨度を決定する診療ガイドラインは、まさにこのエビデンス総体に該当するはずのものである。一方、このエビデンス情報(と専門家の経験)、その情報に対する患者の理解や期待、患者の価値観/希望などをシステム的に共有し、治療の意思決定に反映するShared decision makingは、一方向的な説明に対し同意を得るというInformed consentと対比され、近年世界中で注目されている。しかしながら、理学療法士において診療ガイドラインやShared decision makingの基本的な知識を学ぶ機会は多くなく、臨床現場には反映されていない現状がある。今回は、診療ガイドラインとShared decision makingについて説明し、その可能性について考察する。
著者
木村 朗
出版者
日本公衆衛生理学療法研究会
雑誌
日本公衆衛生理学療法雑誌 (ISSN:21895899)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.1-6, 2013 (Released:2018-03-16)

理学療法は昭和40年日本において理学療法士法が成立して以来、2013年時点でおよそ10万人を超える有資格者によるサービス提供体制を持つに至った。 さらに、公衆衛生学的な課題に応えるためのサービスの提供のためには、新たに保健医療福祉システムの視点および社会の価値観と経済成長、情報通信技術(Information Communication Thecnology,ICT)の進歩、生活様式の変化など社会的視点を加えながら研究し、社会に貢献することが公衆衛生理学療法の視点であり、本研究会の設立趣旨はそこにある。 このような具体的な課題を、従来の理学療法に収束させるだけでなく、展開することを目的として研究する場として本会は設立された。さらに、インターネットの機能が進歩したため、研究会運営をwebベースで行うことができるようになったことが契機となり、日本公衆衛生理学療法研究会の発起人の会が生まれ設立総会が平成24年10月25日に開催された。研究会の運営とHomepageの管理を、m3.comで行うことが可能になったことからスポンサーの確保などの心配がなくなり、従来の学会組織と一線を画す運営形態がとれる見通しが立った。
著者
木村 朗
出版者
日本公衆衛生理学療法研究会
雑誌
日本公衆衛生理学療法雑誌 (ISSN:21895899)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.18-23, 2017 (Released:2018-03-16)
参考文献数
11

はじめに:日本の20歳代の若者では、血糖スパイクの発生率はそれほど高くないと報告されているが、1995年以降に生まれた20歳代の血糖スパイクの発生率は増加している。 目的20代の青年の血糖スパイクを予測する発達上の複雑な要因を探った。 方法:20歳代の血糖スパイクを予測する発達因子の影響を、後ろ向きコホート研究によって分析した。予測因子は、出生体重、3歳の体重(BW)、12歳のBW、15歳のBWであった。高校時代の運動習慣の有無、20代の物理的な不活動の存在、20代の食事中の野菜や果物の摂取、20代の朝食摂取習慣の存在、20代の血糖スパイク(GS)の存在。我々は、肥満の存在を従属変数とするロジスティック回帰モデルを用いて分析した。 結果:67名(平均年齢21±0.4歳、女性51%)が分析に含まれた。血糖スパイクの頻度は13.4%(1.079〜78.219)であった。血糖スパイクへの影響の個々の因子を調整した後、最良の予測モデルは、12歳の性別、性別、定数(誤差)で構成される。唯一有意な予測因子は、12歳の1.222(1.038〜1.438)のBWであった。性別0.05(0.003~0.831)、定数0.0098。性別による効果の差異が示された。興味深いことに、野菜と果物の摂取量、出生時体重、3歳と15歳のBW、高校時代の運動習慣、20代の身体活動、20代の朝食摂取習慣、20代のGSが血糖スパイクの予測に関連する。 2008年頃の日本の経済不況の影響は、伝統的な日本料理から輸入された安価なブドウ糖食品の普及にも影響を及ぼしている可能性がある。 結論:我々の所見は、おそらく2008年頃の12歳の青年の体重を、20歳の青年期の血糖スパイクを予測する発達上の複雑な要因として示している可能性が示唆された。